モロヘイヤで地域活性に再チャレンジ!兵庫県上郡町
モロヘイヤの町、上郡の新しい風
赤穂郡上郡(かみごおり)町は兵庫県南西部、岡山県との県境近くに位置する人口約15,000人の静かな町。1987年に園芸科のある上郡高校が栽培を始めて以来、モロヘイヤはこの町の特産品です。
農家の高齢化により作り手が減り、最近は生産量も減っていましたが、ここにきて、若い農家さんと役場の職員が、上郡産モロヘイヤを再び盛り上げようと奮闘しているようです。
その真相を確かめるべく、モロヘイヤ復調の兆しが見える上郡町に行ってきました。
モロヘイヤ栽培2年目で大収穫、大前さんの「こころ農園」
小柄で笑顔が可愛らしい大前まどかさんは、上郡町の農家さん。
上郡町で生まれ育ち、同じく上郡町ご出身のご主人と一緒に、モロヘイヤなど葉野菜を中心に栽培されています。
「就農したばかりの新米でも比較的作りやすい野菜」と薦められて始め、失敗続きの1年目からいろいろ試行錯誤し、2年目の今年は二人では収穫しきれないほどの量を生産しています。モロヘイヤは夏だけの野菜という印象ですが、うまく作れば4月末〜9月くらいまで収穫できるのだそうです。
収穫したモロヘイヤは袋詰めして、JA兵庫西の農産物直売所「旬彩蔵」やその他の直売所で販売するほか、学校給食にも提供しています。
上郡町の学校給食は地産地消。給食センターで作成する献立に応じて、必要な野菜を地元の登録農家が用意するかたちです。
大前さんのモロヘイヤは、給食では、スープや和え物、かき揚げなどで提供されているそうで、美味しそうなメニューを献立表で見つけると、大前さんも給食センターの栄養士さんに、レシピを教えてもらうこともあるのだとか。
子供たちに安心・安全な野菜を食べさせたい
大前さんご夫婦には、中学1年の長女を筆頭に、4人のお子さんがいらっしゃいます。就農前は、それぞれ全く別の仕事をしていたお二人ですが、農業をやろうと思った理由は「いつも家族と一緒にいられるから」。
特にご主人は前職では夜勤などもあり、家族と一緒に過ごす時間が少なく、残念に思っていたそう。それが今では、お子さんたちも一緒に畑に行き、袋詰めなどのお手伝いをしてくれたりもするそうです。とても素敵な就農理由だと思いました。
そして、もう一つは子供たちに安心・安全な野菜を食べさせたいという思いから。モロヘイヤも、兵庫県認証食品「ひょうご安心ブランド※1」の基準で栽培しています。
※1「安全・安心なひょうごの食環境」実現のために設けられている認証制度。残留農薬が国の基準の10分の1以下など「安全性の確保」や生産方法、品質など厳しい基準が定められている。
2018年「かみごおり農業女子 畑の女」発足
2018年、大前さんは、お米農家「杉本農産」の原田さん、ぶどう農家「沖中ぶどう園」の沖中さんとともに、女性だけの農業従事者グループ「かみごおり農業女子 畑の女」を発足します(代表は原田さん)。上郡の農業従事者を増やし、地元の農産物の魅力を発信していくことが目的です。
まずは地域の子供たちに、畑の土に触れたり、いろいろな体験をしてもらいたいと、「畑の女」では、親子で参加できるマルシェや、野菜の植え付け体験、クッキング教室など、いろいろなイベントを企画・開催しています。
イベントは盛況。いつも定員いっぱいの申し込みがあるそうです。
決して甘くない、モロヘイヤ農家の現状
実は、大前さんのようにモロヘイヤを栽培する農家は、意外にも多くはありません。直売所にモロヘイヤを出しているのは数軒。
「先日も、高齢のため収穫ができなくなった農家さんが、ボランティアの方たちに手伝いをお願いしたようです。」と大前さんがお話くださいました。
ここ上郡でも全国のほかの地域と同じように、高齢化により農家が減る傾向のようで、大前さんご夫婦のような若い農家さんは希少。
でも、この現状を上郡町は手をこまねいて眺めているわけではありません。
町の産業振興課が中心になり、なんとか現状を変え、特産品モロヘイヤの生産量を上げようという動きがあるようです。
大前さんにご紹介いただき、後日、上郡町役場の産業振興課を訪ねることになりました。
特産品モロヘイヤの復活をかけて奔走。町役場の新たな挑戦
農家の大前さんに「冬場もモロヘイヤ作ってもらえませんか」と話をもちかけたという産業振興課の岡田さん。上郡町役場にうかがって、その真意をお聞きしました。
「栄養価が抜群に高いと言われているモロヘイヤなので、これを町の人たちに1年間食べてもらって、本当に健康に良い効果があるのか調べたい」とのこと。
なるほど。確かに、モロヘイヤを1年間食べ続けるためには、夏の野菜モロヘイヤの冬場の調達をどうするかが問題ですね。
せっかく特産品として認知されているモロヘイヤなのに、生産農家も減っていて消費も伸びず、加工品も増えていない。これを町として何とか復活させよう、栄養価が高いモロヘイヤの魅力を発信しようという声が、町役場を中心に上がっていて、栽培してくれる農家も絶賛募集中だそうです。
クリアしなければいけない課題としては…
- 生産者を増やす
- そのためには、モロヘイヤの売り上げを上げる必要がある
- モロヘイヤの魅力を発信する
- 一般消費者に生葉を売る以外に、加工品の原料としての可能性、売り先を探す
- 大規模農園での効率的な栽培、収穫も検討
などなど…。
モロヘイヤV字回復に向けた取り組みは始まったばかりですが、特産品を盛り上げようとする人たちの熱い想いが伝わり、「モロヘイヤの町」の新しい風を確かに感じた上郡町訪問でした。
本日のおまけ