
株式会社asken インタビュー
累計会員数700万人を突破!?ダントツの人気を誇る食事管理アプリ「あすけん」とは。


あすけんユーザーの間で、
ちょっとザワついてるモロヘイヤ
Twitterで、モロヘイヤに関する投稿を調べていると、こんなツイートを見かけることがあります。(実際の文言とは一部変更しています)
「あすけんが、毎日モロヘイヤをすすめてくる」
「あすけんの女にモロヘイヤを食べるよう言われてるんだけど、どこに売ってる?」
「あすけんレディがすすめるモロヘイヤ。調べたら夏のお野菜なのね」
「あすけんの健康度82点。モロヘイヤめちゃめちゃ優秀!」
「あすけんのお姉さんがすすめるから、明日はモロヘイヤを使った料理を食べよう。でも、モロヘイヤってどうやって食べるんだ?」
「モロヘイヤのおかげでビタミンAは摂れたけど、やっぱりAとDは摂りにくいね」
投稿しているのは全て「あすけん」という食事管理アプリのユーザー。
モロヘイヤを食べて「あすけん」のスコアが劇的に上がった人。「あすけん」にすすめられてモロヘイヤを探している人。「あすけん」でモロヘイヤという野菜を初めて知った人・・・。
「あすけん」が、モロヘイヤの普及に一役買ってくれているのでは?と思えるようなツイートの数々です。
「あすけん」とは、食事内容を入力することで、摂取カロリーや栄養の過不足がわかる食事管理アプリ。今年4月には、累計会員数が700万人を突破しており、この手のアプリでは、国内人気No.1と言ってよいかと思います。
今回、株式会社askenの本社を訪問し、広報兼栄養士の多田綾子さんに、「あすけん」について、いろいろ聞いてみました。

株式会社asken 本社入口で、AI栄養士の未来(みき)さんがお出迎え
本当は、ダイエットアプリではない!?
「あすけん」でモロヘイヤの栄養価の高さを知った人も多いようです。まずは、モロヘイヤの普及にご尽力いただき、ありがとうございます!
多田:いえいえ、そんな(笑)。

株式会社asken 広報兼栄養士の多田綾子さん
「あすけん」を利用されている方って、どんな人たちなのでしょうか?
多田:そうですね、現状、やはりダイエット目的で利用されている方が多いです。
名称は「食事管理アプリ」のようですが、「ダイエットアプリ」と呼んでいないのは、何か理由があるのでしょうか?
多田:もともと「あすけん」は、ダイエットのために開発されたわけではないんです。
え、そうなんですか?
多田:「あすけん」のサービスが始まったのは、2007年なんですが・・
2007年というと、まだスマホもない時代ですね。
多田:はい、最初は、PCで利用するインターネットサービスとして始まりました。
2008年から、特定健診・特定保健指導※1が義務化されたのですが、この制度がスタートするタイミングで、企業向けの食事管理サービスとして開発したのが「あすけん」です。
健診で問題があった人の多くは、適切な食事管理を必要とします。そのため食事管理のサポートの需要があると考えたのです。
※1 2005年にメタボリックシンドロームの診断基準が発表されたことを受け、2008年、メタボリックシンドロームの予防と改善を目的とした「特定健診・特定保健指導」の制度がスタートした。
最初は BtoB のサービスだったんですね。
多田:弊社の親会社、株式会社グリーンハウスは、社員食堂や学食、病院食などを提供する、食と健康に関わる事業を展開しています。多くの管理栄養士・栄養士が在籍していて、栄養指導の知見も蓄積していますので、そうしたリソースをデジタルに置き換えて、企業向けのサービスとしてスタートしました。
今でこそ「健康経営」が注目されていますが、当時は、まだそのような考え方は一般的ではなく、実際には期待していたようには普及しませんでした。
一方で個人ユーザーが増えてきた、というわけですか?
多田:当時、食事内容を紙に記録するだけでダイエットが継続できて成功するという、レコーディングダイエット※2が流行っていまして、ダイエットをしたい20代・30代の女性が「あすけん」を見つけて、「これは使える」ということになったようです。
※2 岡田斗司夫 著『いつまでもデブと思うなよ』(2007年 / 新潮社)がベストセラーとなり、この書籍で紹介された「レコーディング・ダイエット」が流行した。
その後、2014年にアプリ化したことで、さらにユーザー数が伸びていった、という感じです。
コロナ禍による影響もあったようですね。
多田:ありました。健康を意識し始めた人が増えたのだと思います。それまで、忙しいビジネスマンの場合、昼はコンビニ、夜は外食という人も多かったと思いますが、コロナ禍でリモートワークになって、家で食事をする人が増えました。食事や生活を見直す機会になったのだと思います。「あすけん」のユーザーも、2020年以降、顕著に増えています。

ダイエット目的ではない人も増えてきた、ということですね。
多田:はい、最近はユーザーの目的が多様化してきています。筋トレ効果を高める食事を目的にしている人や、数は少ないですが、60代〜70代の方もいます。ダイエットというより、健康管理や日記を楽しんでいるようです。
日記をつける機能もあるんですね。
多田:「みんなの日記」というSNSのようなサービスがあります。食べたものを記録したり、お互いにフォローしあったり、コミュニティ的に使っている人が多いです。
情報交換ができるわけですね。
多田:どうしたらもっといい点が取れるか、試行錯誤される方や、すごく研究してくれる方もいらっしゃって、情報交換も活発に行われています。
スコアが伸びるとやはり嬉しいので、Twitterで発信される方もいますし、「みんなの日記」で共有する方もいます。
簡単入力で、日々の食事を採点。
食事内容を入力するといっても、自宅で料理する場合や、外食の場合、加工食品やお菓子など、ありとあらゆるものがありますよね。入力方法は、どんな形になっているのでしょうか。
多田:日々の食事内容の入力は、基本は検索して選んでいただくようになっています。
例えば「ごはん」を入力する場合は、検索結果に出てくる白米や玄米、雑穀ご飯、もち麦ご飯などの種類を候補の中から選びます。その他、食事写真の画像解析で登録する方法や、市販食品のバーコードを撮影して登録する方法もあります。
いつも食べるものは履歴が出るので、次回からは簡単に入力できます。
外食チェーン店のメニューや、スーパーで売られている市販商品なども多くはデータベースに登録されていますので、検索して選ぶだけで簡単に入力できます。
万一、見つからない場合は、登録のリクエストができるようになっています。

日本人が何を食べているのかわかる、すごいデータベースですね。売れ筋の商品なんかもわかっちゃいますね。
多田:はい、最近この商品の人気があるみたいだなと思っていたら、しばらくしてからテレビで紹介されたり、ということはあります。
健康度を100点満点で採点されるとのことですが、採点基準は、どのように設定されているのですか?
多田:摂取カロリーが適正かどうか、栄養のバランス、それから運動もどのくらいしたかで総合的に採点します。

コースによって、14~16種類の栄養素を棒グラフで表示。AI栄養士の未来(みき)さんからのアドバイスがもらえる。
運動も関係あるんですか?
多田:はい、関係あります。スマホの歩数計の機能と連携すれば、歩数などを読み込みますし、エクササイズなどの運動記録を入力することもできます。
本当に健康になりそうですね。ちなみに、何点取らないとダメ、みたいな合格ラインはあるのでしょうか?
多田:合格ラインは特に設定していません。それぞれのペースで取り組んでいただけば結構です。
「あすけん」は、厳格な食事管理を求めているわけではありません。入力も、写真に撮っておいて後からまとめて登録をする方もいますし、実際に食べたものと似たものを入力していただいても大丈夫です。
AI栄養士の未来さんも、あまり厳しいことは言わないですよね。
多田:はい、すごくやさしいんです。厳しいことを言われると、やる気をなくしてしまう方もいますから(笑)。
弊社では、食事を楽しむことは大切なことだと考えています。食事を楽しむことは人生を豊かにしてくれます。私自身もそうですが、いろんな美味しいものを食べたいですよね。
ただ食べ方には気をつける必要があります。毎日ジャンクなものを食べ続けたら体を壊してしまいます。食事を楽しみながら、バランスの取り方を身につけるために、このアプリを活用していただけたら、と考えています。
もっと食べるべきは野菜。
控えるべきは飽和脂肪酸と塩分
冒頭で「モロヘイヤをよくすすめられる」というツイートを紹介しましたが、不足している栄養素によって、おすすめされる食材は色々あるのでしょうか?
多田:不足しやすい栄養素に対して、おすすめする食材はさまざまあります。おそらく数百以上はあるかと思います。
おすすめ食材以外にも、たくさんのアドバイスがありそうですね。
多田:食生活改善のアドバイスは、20万パターンくらいあります。ユーザーの食事内容や運動量等に応じて、それらの文章をAIが組み合わせて、その人に合ったアドバイスを表示する仕組みです。
15年もサービスを提供されていると、不足しがちな栄養の傾向なども見えてきていますか?
多田:ダイエットをしている方々が不足しがちで、かつ意識して摂っていただきたい栄養素として、鉄分、カルシウム、あとビタミン類は、ビタミンB1、B2、ビタミンC、そして食物繊維などをおすすめしています。
何を食べたらいいんでしょう?
多田:野菜はもっと食べた方がいいと思います。あとは果物ですね。
ただ、食事から摂るのが難しい栄養素も確かにあります。そういった場合は、サプリメントなどで補ってもいいと思います。
逆に過剰になりやすいものは、やっぱり脂質です。糖質については、最近「糖質OFF」が普及してきているので、糖質を控えめにした食事を選びやすくなってきたと思いますが、脂質、特に飽和脂肪酸は、すぐに過剰になってしまいがちです。
飽和脂肪酸というと、肉ですか?
多田:はい、お肉がやっぱり多いですが、菓子類やインスタント食品などの加工食品にも多く含まれています。
スーパーやコンビニに売っているものを、何気なく買って食べていると、すぐに飽和脂肪酸が過剰になってしまうので、ユーザーの方から「厳しすぎる!」と言われてしまうこともあります。
それと塩分ですね。これも加工食品を多く食べていると過剰になりがちです。
さまざまな人々が健康でいてもらえる社会を作りたい
今後の展開について教えていただけますか?
多田:可能な限り、さまざまな人々のニーズに応えられるサービスを提供していきたいと考えています。
現在のあすけんは「健康を支援するサービス」として展開をしてきました。しかし、実際にあすけんをご利用いただく方の中には、持病をお持ちで、カロリー制限をして減量をする必要がある方もいらっしゃいます。
病気を治すためのアプリではないのですが、糖尿病や高脂血症などで食事に気をつける必要のある人が、あすけんは食事管理に便利ということで、利用していただいていたのです。
2019年に立ち上げた「あすけんBLUEサークル」というコミュニティがあるのですが、これは、持病のある方で「あすけん」を使っている人がつながる場を提供するものです。
糖尿病、脂質異常症、高血圧など、さまざまな持病を持つ人がメンバーになっており、何を食べたらいいかわからない、必要な栄養素をどんな料理で摂ったらいいかわからない、どうやって塩分を落としたらいいかわからないという方々に、管理栄養士によるコラムで情報提供をしたり、メンバーの方々のインタビュー記事を配信したり、似た状況の人同士をつなぐ緩いつながりを作っています。

メンバーは何人くらいいらっしゃるんですか?
多田:メンバーはすでに6,000人を超えています。お医者さんや看護師さんから紹介されて入る方も多いです。
持病を持つ方の食事管理に「あすけん」がお役に立てるのであれば、積極的にサポートしていこうと考えています。
確かに、病気になった時の食事管理は、毎日のサポートが重要ですね。
はい。昨年は、京都大学の研究グループと共同で、糖尿病患者の栄養食事指導を補助するアプリを開発し、現在、臨床研究を行っているところです。
そして、6月には、「あすけん」の新たなコースとして、妊婦さん向けのコース「あすママコース」をリリースしました。妊婦さんや授乳期の女性の食事や体重管理をサポートすることを目的としたコースです。
今後も、いろいろな人々の食事をサポートすることで、いろいろな状況にいる人々が、より健康になれるように、少しでも快適に生活ができるように、サービスを充実させていきたいと考えています。
本日は貴重なお話をお聞かせいただき、ありがとうございました。