モロヘイヤ効果研究所

農家BAR NaYa 店主 渕上桂樹さんインタビュー

世界一モロヘイヤを食べる民族「ヌビア人」と暮らした「農家BAR」店主が作るヌビア風モロヘイヤスープとは?

農家BAR NaYa農家BAR NaYa

撮影用にモロヘイヤの葉をグラスに盛り付けていただきました。実際には、このようなメニューはございません。

世界一モロヘイヤを食べる民族

モロヘイヤといえば「エジプトでよく食べられている野菜」ということを、ご存知の方も多いのではないかと思いますが、そのエジプトの中でも、特にモロヘイヤをたくさん食べる人々がいる、ということをご存知でしょうか?

その人々の名前は、ヌビア人。

エジプト南部の町アスワンあたりからスーダン北部に至るナイル川流域は、古来ヌビア地方と呼ばれています。

この地域の先住民族がヌビア人で、他の地域の人たちよりもモロヘイヤをたくさん食べると噂の人々です。

渕上さんとヌビアの人々

渕上さんとヌビアの人々

今回、ヌビア人のことを教えてくれたのは、長崎にあるバー「農家BAR NaYa」の店主、渕上桂樹さんです。

お店では、この夏「ヌビア風モロヘイヤスープ」なるものを出されているのだとか。

ヌビア人とは、どのような人々なのか?
「農家バー」とは一体どのようなお店なのか?
そして「ヌビア風モロヘイヤスープ」とは?

まるで農家の納屋。それが「農家BAR NaYa」

「農家BAR NaYa」は、長崎市鍛治屋町にある、渕上さんが経営するバーの名前。お店のコンセプトは、その名の通り農家の納屋。

店内には薪が積まれていたり、麻袋やバケツがランプシェードになっていたり、と遊びゴコロが満載です。

農家BAR NaYa

しかも、棚に並んでいるお酒のラベルには「ゴーヤ」「しいたけ」「ごぼう」「トマト」… と野菜の名前がずらり。

そうです、ここは果物や野菜を漬け込んだお酒が飲める、全国的にも珍しいお店。60種類近くあるこれらのお酒は全て渕上さんの自家製です。

農家BAR NaYa

ゴーヤ、しいたけ、ごぼう、野イチゴ、キウイなど、野菜酒と果実酒がずらりと並ぶ

渕上さんは、雲仙市のご出身。大学卒業後、千葉県で大手スーパーに就職しましたが、Uターンをして実家に戻り、兼業農家だった実家で農業を始めます。

ところが元来、人と話すのが好きな渕上さんは、収穫した農産物の対面販売をしているうちに、「もっとお客さんと話がしたい」「農業について、野菜について、もっと知ってもらいたい」という気持ちが強くなっていきました。

やがて、農産物の販売ついでに、店頭でホットワインや果汁の生搾りジュースを提供するようになると、飲み物を介して、お客さんとのコミュニケーションがどんどん深まる事がわかりました。

ホットワインの販売

ホットワインを販売していた頃の渕上さん

それならばと、実家の農業は弟に任せ、2018年にオープンさせたお店が、この「農家BAR NaYa」です。

農家BAR NaYa

農業を知り、大型スーパーの青果部で働いた経験から流通や小売も知り、対面販売で直接お客さんと話すことで、消費者の気持ちもわかる…。

「農家BAR NaYa」のお客さんは、自家製の果実酒や野菜酒はもちろん、渕上さんの話を楽しみに来られる方も多いのだそうです。

9.11が起こった時、渕上少年が思ったこと、
それは「アラビア語を勉強しなければ」だった

時代はさらに遡ります。

アメリカで同時多発テロ「9.11」が起こった2001年。そのショッキングな事件を受けて、日本でも漠然と「イスラム諸国は怖い」という風潮が広まりました。

ところが、当時高校生だった渕上少年は、「こんな事件が起きるのは、イスラム諸国の人たちとの相互理解が足りないからだ。彼らのこともっと知りたい。それにはまず、彼らの言葉を学ばなければ」と思ったそうです。

いつか勉強しようと心に決めたアラビア語。それが実現したのが大学時代でした。

きっかけは大学で知り合ったエジプト人留学生

渕上さんが、エジプトに行くことになったのは大学生の頃。

同じ大学に通うエジプトからの留学生にアラビア語を習っており、「アラビア語圏に行ってみたい」と言ってみたところ、その留学生が「エジプトに行くなら、自分の出身地ヌビアに行って、自分の友だちの家に泊まるといい」と勧めてくれたのです。

エジプトの渕上さん

2004年、ヌビアへ

ヌビア人の村は、エジプト南部の都市アスワン以南のナイル川沿岸に点在しています。

渕上さんが、ヌビアでホームステイすることになった場所は、エレファンティネ島。アスワンを流れるナイル川の中にある南北2kmほどの大きさの島です。

当初、アラビア語は片言しか話せなかったにも関わらず、渕上さんはすぐにヌビアの人たちと打ち解け、彼らから家族の一員のように接してもらったそうです。

エジプトの渕上さん
エジプトの渕上さんト

ヌビア人って、どんな人たち?

エジプトは、主流のアラブ系の人々の他、トルコ系、ペルシャ系、ギリシャ系の人々が入り混じる、いわば人種のるつぼ。古代エジプトの時代から、さまざまな人種・民族が登場してきた場所です。

例えば、前回の記事に登場したヒクソス(エジプト第15王朝)はアジア系の民族、クレオパトラで有名なプトレマイオス朝はギリシャ系の王朝です。古代エジプト時代以降も、ローマ帝国、イスラム帝国、オスマン帝国などに支配されてきた経緯があります。

こうした歴史的な背景のために、現在のエジプトは、いわゆる黒人ではない人々が主流を占める状況になっているわけですが、ヌビアの人々は、肌の色が濃く、髪の毛は縮れていて、アラブ系の人々とは明らかに容貌が異なる人たちです。

ヌビア人が歴史に登場するのはかなり古く、紀元前8世紀頃にエジプトを統一した第25王朝は、ヌビア人の王朝だと言われています。

現在のヌビア人は、文化的にはアラブにかなり同化していますが、ヌビア語も現存するなど一部独自の文化も残っているそうです。

エジプトの渕上さん

渕上さんに、ヌビア人の印象を聞いたところ、「おじさんたちがみんな幸せそう」という答えが帰ってきました。

仕事をしているのかいないのか、昼間からのんびりと道端にたむろしているおじさんたちがたくさんいて、渕上さんが通りかかると、気軽に声をかけてきます。

「いつも忙しそうな日本のおじさんたちとは、ぜんぜん違う」と思ったそうです。

農家BAR NaYa

近所に住むヌビア人の子供たちも、渕上さんのストレートな髪や皮膚の色が自分たちとは違うことを珍しがって、次々に見にきたり、日本の話を聞きたがったり … ヌビア人は素朴で親しみやすい人が多いようです。

ヌビアで、どうしても食べられなかったモロヘイヤ料理

そんな生活の中で、毎日、毎食、食卓に上がる食材がモロヘイヤ。

もちろんエジプト全域で、多くの人がモロヘイヤをよく食べるのですが、ヌビア人ほどではありません。なにしろ「毎食」ですから。

食べ方は、主にスープ。これにエジプトの平たいパンを浸して食べることが多いそうです。

おおむねヌビアで食べた料理は美味しかったそうですが、一つだけ、渕上さんが、どうしても食べられなかったモロヘイヤ料理がありました。

それは、年に一度のイスラム教のお祭り「イード・アル=アドハー」の時に食べるご馳走「ファッタ」。

お祭りの日には、羊を一頭丸ごとさばきます。渕上さんも手伝ったそうですが、生きている動物が食べ物の「肉」になっていく様を、初めて目の当たりにしました。

「ファッタ」は、この羊のモツを入れたモロヘイヤスープを、エジプトのパンを混ぜたご飯にかけて食べる料理です。これが、とても強烈な匂いで、渕上さん曰く「動物そのものの匂い」がするそうです。

招かれた知人宅で出されて、どうしても食べることができず、腹ペコのまま住んでいた家に帰り、ご飯を食べていないことを告げると、またしても「ファッタ」が出されてしまい困ったそうです(笑)。

エジプトの渕上さん

イード・アル=アドハーで食べられる定番料理「ファッタ」

農家BAR Naya のヌビア風モロヘイヤスープ

ヌビアで食べた味をなるべく忠実に再現している、という渕上さんのモロヘイヤスープを、取材後に作っていただきました。

ヌビア風モロヘイヤスープ

農家BAR Naya のヌビア風モロヘイヤスープ

エジプト料理店などで食べると、かなり塩分が強い場合がありますが、ヌビア風モロヘイヤスープは優しい風味で、毎食食べても飽きのこない味です。

最後にほんのひとつまみ加えてあるクミンの爽やかな風味もよくあっていて、とても美味しくいただきました。

ナヤラジオ収録中に、ヌビア人に聞いてみた

話題も豊富でトークが抜群に上手い渕上さん、現在はお店をやりながら、長崎県諫早(いさはや)市のコミュニティFM「レインボーFM(エフエム諫早)」で、ラジオ番組のパーソナリティを務めています。

その番組は、新感覚農業バラエティ「ナヤラジオ」(毎週金曜日 21:00 ~ 21:30)。収録は毎回「農家BAR NaYa」の個室で行っています。

この日は「ナヤラジオ」に、モロヘイヤ応援隊副隊長で、株式会社青粒の副社長、永原盟千さんが出演。モロヘイヤの話題で盛り上がりました。

ナヤラジオ

ナヤラジオは、毎週金曜 夜9時よりレインボーFM(エフエム諫早)でオンエア(諫早市内)。アプリで全国どこからでも聞けます。

収録中、「ヌビアの人たちが、他のエジプト人よりもモロヘイヤをたくさん食べるというのは本当なのか、ヌビアの人に直接聞いてみたい」という話になり … なんと、その場で渕上さんの知り合いのヌビア人に電話をかけ、お聞きする事ができました。

「アッサラーム・アレイコム!」という挨拶で始まった、ヌビア人のナビさんとの会話は全てアラビア語。渕上さんの通訳によると、やはり「ヌビア人は他のエジプトの人たちとは比べものにならないくらいモロヘイヤを食べる」とのことでした。赤ちゃんの時から、すでに離乳食として食べ始めるのだとか。

赤ちゃんの時から毎日健康野菜モロヘイヤを食べて育つヌビア人。渕上さんが受けた「幸せそうな人たち」という印象は、もしかしたらモロヘイヤをたくさん食べているからかもしれませんね。

過去に放送されたナヤラジオ、全部聞けます

過去に放送されたナヤラジオは、「VOICE-JAPAN.com」で聞くことができます。

今回の収録の約1ヶ月前、ナヤラジオで「モロヘイヤ」の回が放送されました。ファッタの話なども聞けます。ぜひお聞きください。

今回収録された内容は下記のリンクから。モロヘイヤ応援隊副隊長がゲスト出演。番組ではちょっとしたサプライズも。ヒントは下の写真!

ナヤラジオ

渕上さんの挑戦は、まだまだ続く

農家BAR NaYaを切り盛りし、ラジオ番組のパーソナリティを務め、それだけでもすごいのに、渕上さんの新しいチャレンジは、既に始まっています。

その一つは、食と農に関する情報メディア「AGRI FACT(農業技術通信社)」でのコラム執筆。タイトルは「渕上桂樹の“農家BAR NaYa”カウンタートーク」。

そしてもう一つ。今年、渕上さんは、ふるさと雲仙市に株式会社ナヤカンパニーを設立しました。その目的は「雲仙ひつじ」「雲仙ラム」の復活。

実は、雲仙市は日本の牧羊発祥の地。ふるさと雲仙市に新たな産業を興すべく、弟と共に雲仙羊の牧場開設を目指しています。

雲仙羊牧場

今後も、渕上さんのご活躍を期待しています。
とても楽しい取材になりました。ありがとうございました。

農家BAR NaYa Facebook
農家BAR NaYa Instagram
渕上桂樹 Twitter
株式会社ナヤカンパニー Facebook

【橋本ゆきみ × 小松あき オンライン対談】クレオパトラは、本当にモロヘイヤを食べていたのか?

自然栽培のモロヘイヤとインド仕込みのマサラで作った「闇夜の満月カレー」誕生秘話

令和のポパイは、モロヘイヤで強くなる!プロボクサー徳山洋輝は、なぜモロヘイヤを選んだのか?

モロラボ・スペシャル

夢のコラボ!なっとう娘が家庭菜園で育てたモロヘイヤで作るモロヘイヤ納豆

累計会員数700万人を突破!?ダントツの人気を誇る食事管理アプリ「あすけん」とは。

年の瀬に起こった、奇跡の「モロ活」とは?

あまりの数値の高さに再分析!日本で初めてモロヘイヤの栄養分析をした吉田先生に当時のお話を聞きました。

葉酸やカルシウムが多いモロヘイヤは、妊娠中の女性におすすめ?母子栄養の専門家の先生に聞いてみた。

野菜嫌いの子供たちも、野菜好きになる!?小島よしおの「野菜の歌」に、モロヘイヤ登場!

おいしさを大きく左右するのは、食品のテクスチャー。「ねばねば野菜のおみそ汁」はモロヘイヤが決め手!

【橋本ゆきみ × 小松あき オンライン対談】クレオパトラは、本当にモロヘイヤを食べていたのか?

自然栽培のモロヘイヤとインド仕込みのマサラで作った「闇夜の満月カレー」誕生秘話

令和のポパイは、モロヘイヤで強くなる!プロボクサー徳山洋輝は、なぜモロヘイヤを選んだのか?

公認スポーツ栄養士・橋本玲子先生がアスリートにおすすめする最強野菜は、モロヘイヤだった!

子どもの食を見直すとともに、地域の活性化にもつなげる「まつさか☆こどもスイーツプロジェクト」とは

モロヘイヤ栽培の先駆者、三重県のJAが救ったモロヘイヤの危機とは

有機・無農薬栽培のモロヘイヤは、栽培歴25年。さまざまな取り組みにチャレンジし続ける、愛と平和の「森の農園」。

独自開発の有機性肥料「えか5」と農福連携で、地球と人にやさしい農業を目指す!

自然と人間が調和した持続可能な社会を目指し、タイの農園で本物の野菜作りに挑む!

薬膳宅配専門店「おかゆや」が作る「モロヘイヤおかゆ」

実話を元に作られた曲『モロヘイヤ』に込められた思いとは

千葉市稲毛区にあるカレーの名店「SHIBA(シバ)」の人気メニュー「モロヘイヤカレー」

立山山麓の玄関口、大山地域で作られる無農薬モロヘイヤを使ったグルメ探訪

鞍居ふるさと村づくり協議会が挑む、ふるさと復活大作戦

天空のモロヘイヤ by はっぱや神戸 野菜ごはん

モロヘイヤの町、上郡の取り組み「モロげんきくん健康ポイント制度」

農Tube委員会が、農業初心者にオススメする最強野菜は、モロヘイヤだった

無添加モロヘイヤスイーツが食べられるガーデンレストラン「陶酔房ー」

上郡高校農業科が作るスーパー卵「モロたま」

まるでモロヘイヤまつり!?第8回 おおさと夏まつりに行ってきました

モロヘイヤの町、上郡の新しい風

秋田の農家レストラン「ゆう菜家」さんで、モロヘイヤ三昧!

香川県農業試験場で「さぬきのヘイヤ」うんちく講座を受講してきました。