
フリーズドライ技術で未来の食を見据える食品メーカー、コスモス食品
おいしさを大きく左右するのは、食品のテクスチャー。
「ねばねば野菜のおみそ汁」はモロヘイヤが決め手!


フリーズドライ食品を製造して半世紀以上のコスモス食品。売れ筋商品の1つが、モロヘイヤ、ながいも、オクラが入った「ねばねば野菜のおみそ汁」だそうです。
フリーズドライとは、そもそもどのような技術なのか?「ねばねば野菜のおみそ汁」の美味しさの秘密とは?
株式会社コスモス食品、開発担当の中田さんと、EC企画グループの永野さんにお話を伺いました。
知っているようで知らない、フリーズドライとは?
御社は51年前の創業当初からフリーズドライ食品を製造されているということですが、フリーズドライの技術はいつ頃からあるのですか?
中田さん:フリーズドライは第一次世界大戦時に、輸血用の血液を輸送するという医療の目的で開発されたものです。食品への利用が始まったのは、50年くらい前から。食品製造の機械メーカーにいた、弊社の創業者、圓井(現社長の父)が、これからはフリーズドライ食品の需要が高まるだろうと考え、起業いたしました。
そんなに早くに需要を予想されていたとは、先見の明がおありだったのですね。
中田さん:そうですね。創業当初は山芋の粉末を製造し、朝食用にホテルや旅館に卸していました。手軽に元に戻り、保存もきくとあって重宝されていたそうです。そのうち、カップ麺の具材などで一気に需要が高まりました。自社製品を作り始めたのは 20年ほど前になります。


EC企画グループの永野さん(左)と、開発担当の中田さん(右)。モニター内は、東京銀座オフィスから遠隔参加していただいたコミュニケーションマネージャー(広報)の田中さん。
フリーズドライとは、そもそもどのような技術なのでしょうか?
中田さん:マイナス30度くらいで凍結させた食品を真空状態にし、低温で水分を蒸発させる乾燥方法です。
山の上など気圧が低いところでは100度に達していなくてもお湯が沸くのと同じ原理で、真空になった食品は、低温度で水分が蒸発します。熱をかけずに乾燥させるので、素材の持つ栄養価や色あい、風味を損なうことなく保存できる画期的な方法なのです。
栄養価が損なわれない…だけではダメ。
「おいしい」ことが大切。
「インスタント食品は栄養価が低い」というイメージがありましたが、そんなことないのですね。むしろ、栄養価が保存される・・・。
中田さん:その通りです。ただ、栄養価が損なわれないことはもちろん大事ですが、弊社の理念として、まず「おいしい」ことを大切にしています。日常の食事の、おいしさ、楽しさをお届けすることが大前提。さらに、栄養があって体にいい食品でもあること。それが弊社のこだわりなのです。
なるほど!「おいしく楽しい食」にこだわって作られていることは、おみそ汁シリーズの「しあわせいっぱい」という商品名にもあらわれていますね。
気になる「ニコニコ製法」とは?
この「しあわせいっぱい」シリーズが他社のものと違うところは、1つの袋の中に、具材と味噌、2つのフリーズドライブロックが入っていることですね。
中田さん:はい。「ニコニコ製法」と呼んでいます。
中田さん:「しあわせいっぱい」の味噌汁は、もともと1つのブロックでしたが、お客様から「普通に作る味噌汁よりも具材が塩辛く感じる」というご指摘を受け、2つのブロックに分ける方法を考えました。
具材と味噌は、最適な乾燥条件が異なるので、別々にフリーズドライにしたほうが、それぞれの風味を生かせることがわかったのです。
私も、よく使わせていただいていますが、手作りのお味噌汁に近い感じがしますね。
中田さん:実は、別のブロックにすることで、風味だけではなく味噌の酵素が壊れにくいというメリットもあることがわかりました。ニコニコ製法の技術によって、日本人が昔から味噌汁によって体に取り入れてきた、発酵食品の恩恵も再現できていると思います。
おみそ汁のテクスチャーを、
モロヘイヤで作り出す
「ねばねば野菜のおみそ汁」という商品は、どのように生まれたのでしょうか?
中田さん:当時、開発チームで「とろみ」が欲しいという意見が出ていました。
社内の調査により、食品のおいしさを決める要素として、「香味」「見た目」「色調」などを抑え、「テクスチャー(素材感)」が最も影響を及ぼすというデータがでており、「とろみ」や「のどごし」といったテクスチャーがとても重要だという認識がありました。
とろみをつけるために一般的に用いられるものとして、増粘多糖類やデンプンがありますが、湯戻りや食感の面で問題がありました。その点、モロヘイヤは粘性もあり、湯戻りも口当たりもよく、うってつけの食材だったのです。


それは面白いデータですね。確かにモロヘイヤなら、何も足さずにとろみが出ますね。
中田さん:モロヘイヤのとろみには、味噌の風味や出汁の旨味を口の中で滞留させ、余韻を残すような効果もありました。
それだけではなく、野菜の王様と言われるモロヘイヤの高い栄養価を、フリーズドライの技術によってそのまま摂ってもらえるということで、「ねばねば野菜のおみそ汁」は、まさに弊社の理念をそのまま形にしたような商品になりました。
主婦の味方!「ぱぱっとベジ」
乾燥野菜のシリーズ「ぱぱっとベジ」にも、モロヘイヤがありますね。
永野さん:はい、こちらは WEB販売を盛り上げようという企画で、開発チームのひとりが主婦目線で考えた商品です。「保存がきいて、欲しい時に欲しい分だけ使える野菜」というコンセプトでシリーズ化しました。そのままスープやおみそ汁に入れてもいいですし、いろいろな料理に手軽に使えます。
「揚げなす」もあるんですね。とっても便利そうです。まさに「主婦の味方」という感じです。
永野さん:栄養価も高いので、ぜひ普段の料理にお使いいただきたいです。
実食!フリーズドライのモロヘイヤ
お話をお聞きした後、「ねばねば野菜のおみそ汁」と「ぱぱっとベジ モロヘイヤ」を試食させていただきました。


「ぱぱっとベジ モロヘイヤ」は、「もずく酢モロヘイヤ」でいただきました。作り方は簡単。市販の「もずく酢」に「ぱぱっとベジ モロヘイヤ」を混ぜるだけで、あっという間に栄養豊富な副菜のできあがりです。


どちらも、とってもおいしかったです。ごちそうさまでした。
食品が持っているストーリーを大切にする
おみそ汁やスープなどの他にも、たくさんの商品が揃っていますが、商品開発はどのように行なっているのですか?
永野さん:「化学調味料無添加」や「体によい食品」であることは、言うまでもないのですが、その上で、「自分たちが作りたい商品」と「お客様が求めている商品」をマッチングさせることに努めています。そういう意味でも、お客様とのコミュニケーションはいつも大事にしています。


永野さん:もう一つは、食品が持つ「ストーリー」を大切にすること。例えば、「トムヤムクン」の開発では、一般的なトムヤムクンペーストを使用するのではなく、タイにおいても失われつつある昔ながらの作り方を、タイ人のおばあちゃんたちから聞き出して再現することに挑戦しました。その食品が持っている歴史や文化といったストーリーにも関わっていく、ということを意識しています。
コスモス食品の未来
災害が多く非常食のニーズが増えていることや、高齢化で調理ができない人の栄養問題など、フリーズドライ商品は今後も需要が伸びていくのではないかと思いますが、今後の展望をお聞かせいただければと思います。
中田さん:災害食については、すでに手がけているものもあります。弊社の考えとして、災害食だからおいしくなくても我慢、というのではなく、むしろ、「災害時こそおいしいものを食べて元気をだしてほしい」「普段食べてもおいしいと思ってもらえるものを作っていきたい」と考えています。
今後の商品展開としては、米や麺などの主食、お菓子など、さらに広いジャンルの食品を開発し、未来の食文化を豊かなものにしていきたいと思っています。
また一方で、フードロスや産業廃棄物の有効利用などの技術で、持続可能な開発目標=SDGsを達成していく企業を目指します。
今後も新商品や、さまざまな取り組みに期待しています。本日はありがとうございました。
