モロヘイヤ効果研究所
モロヘイヤ解体 栄養コラム

監修:管理栄養士 平井美穂先生

モロヘイヤ解体 栄養コラム
管理栄養士 平井美穂 先生
管理栄養士 平井美穂 先生

第19回

<ポリフェノールとカロテノイド>

抗酸化物質で活性酸素を撃退しよう!

増えすぎると大変、活性酸素。

呼吸で取り込んだ酸素を使い、生命維持に必要なエネルギーを作っている私たちは、酸素無しでは生きていけません。しかし、取り込んだ酸素のうちの数%は常に、体にとって好ましくない「活性酸素」に変わってしまいます。

活性酸素は、酸素分子が他の分子と結びついたり、電子を奪ったりしてできる化合物で、大気中の酸素よりも活性化された状態、つまり不安定で色々な物質と反応しやすい性質をもっています。生体内で増えすぎると、脂質、タンパク質、DNAなどを攻撃し、がんや心血管疾患、その他さまざまな疾患や老化の原因となります。

それでも活性酸素が一概に悪者とは言えません。体内の免疫機能や感染防御、細胞の分化や細胞間のシグナル伝達などにも活性酸素が利用されているからです。

必要があって体内でも作られている活性酸素。しかし、増えすぎないようにするために、産生を抑えたり、生じたダメージの修復・再生を促したりするシステムが必要です。それが、抗酸化防御機構であり、抗酸化に役立つ物質を抗酸化物質といいます。

もともと備わっている抗酸化酵素だけでは足りない!?

本来、産生と抗酸化防御機構によってバランスが取れているべき活性酸素ですが、紫外線や放射線、大気汚染、たばこ、薬剤、酸化された食べ物など、外部からの様々な刺激によって増えてしまいます。また、過度なストレスによっても増えると考えられています。

活性酸素が増えすぎることを防ぐために、私たちの体には、もともとSOD(スーパーオキシドジスムターゼ)、カタラーゼなどの抗酸化酵素が備わっているのですが、活性酸素を生み出す外部要因が多いために、さらに食べ物からも抗酸化物質を取り入れて、その量を調整しています。

活性酸素は、狭義では「スーパーオキシド」「過酸化水素」「一重項酸素」「ヒドロキシラジカル」の4種類が知られているのですが、実は、これらの活性酸素に対し、効果がある抗酸化酵素・抗酸化物質が決まっています。

活性酸素の中でも、特に酸化力の高い「一重項酸素」「ヒドロキシラジカル」については、消去できる酵素がありませんので、食べ物から抗酸化物質を摂取して、その力を借りる必要があるのです。

活性酸素の種類

スーパーオキシド、過酸化水素は、抗酸化酵素で消去されるが、一重項酸素、ヒドロキシラジカルは、酵素で分解できないため、無毒化するには、食べ物から摂取する抗酸化物質が必要。

植物のチカラ、抗酸化パワー

抗酸化物質として代表的なものには、ビタミンCやビタミンEなどのビタミン類のほか、ポリフェノール類やカロテノイド類があります。

これらの抗酸化物質は主に野菜や果物などの植物に含まれます。

では植物には、なぜそのような成分が含まれるのでしょう?

太古の昔、海中から陸上に上がった植物は、有害な紫外線から身を守る必要に迫られました。太陽の光は、光合成のために必要ですが、一方で紫外線は、植物のDNAにダメージを与え、細胞を殺したり、突然変異を起こさせたりします。

そこで植物は自分の身を守る化学物質を作り出しました。それが紫外線を防御する役割や、紫外線によって発生する活性酸素を消去する役割を持つ、抗酸化物質なのです。

私たち人間は、植物を食べることで、その植物が作り出した抗酸化の能力を、拝借しているというわけです。

今回は、こうした抗酸化物質の中から、「ポリフェノール」と「カロテノイド」についてお話します。

ポリフェノールとカロテノイド

ポリフェノールが注目を浴びたきっかけ

ポリフェノールの種類は8,000を超えていますが、その多くは強い抗酸化作用のある抗酸化物質として知られています。

ポリフェノールが注目を集めたのは、1990年代のフレンチパラドックス仮説です。

フランス人は、動物性脂肪をたくさん食べるのにもかかわらず、動脈硬化の患者が少なく、心臓病の死亡率も低い、という逆説的なデータがあります。それで、フランス人がよく飲む赤ワインに含まれるポリフェノールの効果ではないか、という仮説が立てられました。それがフレンチパラドックス仮説です。

これをきっかけに、ポリフェノールと健康に関する最初の本格的な疫学調査が行われ、ポリフェノールが、心疾患の死亡リスクを低減することが示されました。それ以降、疫学調査が次々と実施され、健康効果が期待されています。

吸収されにくいにもかかわらず、
さまざまな効果を発揮するポリフェノール

ポリフェノールは、実は体に吸収・貯蔵されにくいという特徴があります。

多くのポリフェノールは、消化・吸収の対象ではない「異物」とみなされて排泄され、代謝により吸収されるものはわずか。水溶性のものが多く、短時間で効果を発揮する一方、排泄されてしまうのも早いのが特徴です。

体内に吸収されないポリフェノールですが、排泄されるまでの短い間に、さまざまな良い働きをしていると考えられています。

まだまだ解明されていない部分が多いのですが、抗酸化以外にも、炎症やアレルギー、骨粗鬆症、視覚機能や、疲労回復への効果、また最近では認知機能など、幅広い分野でポリフェノールの有効性が報告されています。

植物由来なのに、動物の体にも含まれるカロテノイド

ポリフェノールと同じように、食物から摂取できる抗酸化物質として、カロテノイドがあります。

ポリフェノールと同じく植物由来ですが、ポリフェノールが植物にしか存在しないのに対し、カロテノイドはさまざまな生物の体内にも存在します。

光合成をしない動物にはカロテノイドを合成する能力がないにもかかわらず、エビやカニ、魚などの体の中にカロテノイドが存在するのはなぜなのでしょうか?

これには食物連鎖が関係しています。カロテノイドを自ら作る植物プランクトンをオキアミなどの動物プランクトンが食べ、その動物プランクトンをエビやカニ、魚類が食べ、というように、食物連鎖によって、さまざまな生物の体にカロテノイドが取り込まれていくのです。

カロテノイドは脂溶性の抗酸化物質であるため、排泄されず生物の体に蓄積されます。これらの生き物も人間と同じように、カロテノイドを食事から取り入れ、その抗酸化力を利用しているのです。

鮭の身はピンク色をしていますね。川を遡るという過酷な環境で産卵する鮭は、運動量が多く、体内にたくさんの活性酸素ができてしまいます。これを消去するために赤い色をしたカロテノイドの「アスタキサンチン」を取り入れているため、体がピンク色なのです。

また、浅瀬に産む卵(イクラ)を紫外線から守るために、自らの体から卵にアスタキサンチンを移行させていると考えられているそうです。

モロヘイヤに含まれるポリフェノール類とカロテノイド類

抗酸化物質を多く含む代表的な野菜がモロヘイヤです。モロヘイヤに含まれるポリフェノール類とカロテノイド類を見ていきましょう。

ポリフェノール類

モロヘイヤに含まれるポリフェノールの種類を示したのが次の表です。これは、株式会社青粒が、同社の輸入するモロヘイヤ粉末と国産モロヘイヤ粉末のメタボローム解析を行った結果、確認できたポリフェノールの全種類。種類の多さに驚きます。

モロヘイヤに含まれるポリフェノール類

ポリフェノール名
期待される機能
エピカテキン
体脂肪を減らす など
カテキン
血圧のサポート、体脂肪を減らす、虫歯予防 など
クロロゲン酸
血圧のサポート、脂肪の蓄積を抑える働き など
ゲニステイン
骨代謝の促進、更年期障害の症状を改善する効果 など
ケルセチン 3-ルチノシド
(別名:ルチン)
関節の働きをサポート、毛細血管を強化する など
テアフラビン
動脈硬化など生活習慣病の予防、シミなど老化の抑制 など
ヘスペリジン
毛細血管の強化、血流改善作用、血中中性脂肪の低下作用 など
ルテオリン
尿酸値を下げる機能 など
レスベラトロール
肌や髪の老化予防 など
その他のポリフェノール
7, 8-ジヒドロキシクマリン、 7-ヒドロキシクマリン、 N-アセチルスフィンゴシン、 アピゲニン 7-グルコシド、 アピゲニン 8-グルコシド、 イソオリエンチン、 イソフラキシジン、 エリオジクチオール、 エレウテロシドB、 エレウテロシドE、 ガランギン、 カルボン、 ガロカテキン、 クリソエリオール、 ケンフェロール、 タキシフォリン、 ダチセチン、 ナリンゲニン、 バイカリン、 バイカレイン、 フォルモノネチン 7-グルコシド、 フォルモノネチン、 フラバノン、 ミリセチン 3-ラムノシド、 ルテオリン 7-グルコシド

※ 2019年、株式会社青粒が専門機関に依頼して行った、モロヘイヤ粉末のメタボローム解析の結果、確認されたポリフェノール類

モロヘイヤのポリフェノール量は、100g中388mg。他の野菜と比較しても圧倒的に多いようです。

※ 数値は、山梨県総合理工学研究機構の研究報告書より

ポリフェノールは栄養素ではないため、国による推奨摂取量や摂取上限量などは決められていませんが、1日1000mgを目安に摂ることで、効果が期待できると言われています。

前述のように、血液中のポリフェノールは摂取後、数時間で排泄されてしまいます。一度にたくさん摂るのではなく、食事のたびに何か1つ意識的に摂るなど、こまめな補給を心がけましょう。

※ 普通の食事をしている限り、過剰摂取の心配はなく、むしろ積極的に摂ることが奨励されているポリフェノールですが、妊娠中の方だけは、妊娠後期の過剰摂取によって、胎児の心不全や高血圧症を起こす可能性があるため、サプリなどで過剰に摂ることは控えてください。

カロテノイド類

モロヘイヤに含まれるカロテノイド類には、β-カロテンとルテインがあります。

カロテノイドは脂溶性で体内に蓄積されるため、摂取の目安量や上限に気をつけて、過剰摂取を避ける必要があります。β-カロテンとルテインに期待できる機能と摂取量の目安は以下です。

β-カロテン

期待できる機能
人体の粘膜や皮膚、免疫機能を正常に保ち、視力を維持する。
1日の摂取推奨量※1

成人男性:850〜900µgRAE、成人女性:650〜700µgRAE (ビタミンA換算)

摂取上限※1
男女とも2,700µgRAE
モロヘイヤに含まれる量

840 µg RAE/100g※2

※1 出典:厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)
数値はビタミンAの摂取推奨量、および摂取上限。「日本人の食事摂取基準(2020年版)」には、βカロテン単独の推奨量、摂取上限は記載されておりません。β-カロテンは、体内で必要量に応じてビタミンAに変換されて活用されますので、ビタミンAの数値を掲載しています。「 µgRAE(レチノール活性当量)」は、ビタミンAの単位。

※2 出典:文部科学省「日本食品標準成分表2020年版(八訂)

ルテイン

期待できる機能
眼の老化を抑えたり、有害な光を吸収し、眼を守ったりする。
1日の摂取目安量

6mg〜10mg

摂取上限
合同食品添加物専門家会議(JECFA)による国際的な基準は、体重1kgあたり2mgが上限(60kgであれば120mg)。日本では厚生労働省が、「1日あたり35mg程度の摂取は問題ない」とする見解を出している。
モロヘイヤに含まれる量

13.6mg/100g※3

※3 出典:カゴメ株式会社 総合研究所による研究論文『Quantitation of Carotenoids in Commonly Consumed Vegetables in Japan

モロヘイヤの飛び抜けた抗酸化力は、
いろいろな抗酸化物質の総合的な効果

このコラムの「β-カロテン」の回でご紹介しましたが、山梨県総合理工学研究機構が行った「県産野菜の抗酸化活性評価」では、モロヘイヤは他の野菜と比較して、圧倒的に抗酸化力が高いという結果が出ています。あまりにも数値がずば抜けているため、モロヘイヤだけ、一部波線で省略してあるグラフを再掲載します。

野菜のβ-カロテン量

この驚異的な数値は、ビタミンCやビタミンEに加え、モロヘイヤに含まれる多くの種類のポリフェノールやカロテノイドを合わせた、総合的な抗酸化力によるものだと思われます。

抗酸化物質は、1つの種類に頼るのではなく、効果や働く場所の異なる多くの種類を摂取することでより効果が期待できます。さまざまな抗酸化物質を含む、いろいろな食物をバランスよく食べるようにしましょう。

平井美穂

管理栄養士

平井先生のひとことコメント

平井美穂

病気や老化を予防する効果があると言われる機能性成分、ポリフェノールとカロテノイド。

ポリフェノールは植物に含まれる色や香り、渋味やアク成分に含まれます。

赤・黄・緑・黒・白・茶色など、色鮮やかな野菜やくだものを、可能であれば色素の多い皮ごといただきましょう。

機能性成分は、摂取しても短時間で体内から排出される性質ですので、できれば毎食、野菜やくだものを過不足なく摂るよう心がけてください。

カロテノイドは、にんじん・かぼちゃ・トマト・ほうれん草などの植物や、エビ・カニ・鮭などの赤色を呈した動物にも含まれる抗酸化成分です。

モロヘイヤはポリフェノールとカロテノイドを両方合わせ持つスーパー野菜!

日々、色鮮やかな食事を心がけて免疫力の向上を目指しましょう。

PROFILE

管理栄養士・平井美穂

監修:平井美穂(ひらいみほ)

管理栄養士 / 食物栄養学修士 / 調理師 / NPO関西ウエルネス研究所理事

平井外科胃腸科クリニック(神戸市東灘区岡本)、その他透析病院等を含め医療機関にて栄養指導を行う。
百貨店・食品メーカー講師、レシピ提案など、乳幼児から高齢者までを対象に幅広い年齢層に対し、食と健康に関する講演会や料理講習会を行う。

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