監修:管理栄養士 平井美穂先生
第14回
<ビタミンE ②>
「ビタミンE ① “若返りのビタミン” ビタミンE」ではビタミンEの抗酸化作用について説明しましたが、ビタミンEのもう一つの重要な作用が免疫機能のサポートです。
免疫機能とは、体内に侵入したウイルスや病原菌から体を守る働きのこと。ビタミンEは免疫細胞の数を増やして活性化し、体のバリアを丈夫にすることで、体を守ってくれているビタミンでもあるのです。
体は、ウイルスや病原菌など外部からの攻撃に備えて、2段階の防衛機能を持っています。
1段階目は「自然免疫」と呼ばれるもので、マクロファージ、好中球、樹状細胞、ナチュラルキラー細胞といった免疫細胞が、外部から侵入した細菌などの異物を取り込んで溶解したり、破壊したりすることで体を守っています。また、防衛反応の一つである「炎症」の制御を行っているのも、こうした自然免疫を担当する免疫細胞です。
2段階目は、病原体の抗原を体に記憶させることで、次に同じ病原体が入ってきたときに、その病原体の破壊に特化した免疫細胞が素早く強力に反応できるようになる仕組みで、「獲得免疫」「適応免疫」などと呼ばれています。抗体を作るB細胞(Bリンパ球)や感染した細胞を直接攻撃するT細胞(キラーT細胞)、補助的に働くヘルパーT細胞などが、この2段階目の防衛システムで活躍します。
自然免疫と獲得免疫の2段階のシステムで体を守る。私たちの体は、このような素晴らしい仕組みを持っているのです。
免疫機能を正常に保つためには、主要栄養素、エネルギーと共に、特定の微量栄養素が必要です。
ビタミンやミネラルなどの微量栄養素が欠乏すると、自然免疫にも、獲得免疫にも悪影響を与えるとされています。
酸化した脂質(過酸化脂質)は誤った免疫反応をおこす危険性がありますが、ビタミンE が過酸化脂質の生成を抑えて免疫反応を正常に保ちます。
また、免疫細胞のT細胞も他の細胞と同じように加齢と共に衰えて増殖が減ったり、効果が薄れたり、サイトカインの生産が減少したりしますが、ビタミンEを摂ることで改善されることがわかっています。
体にとって重要なビタミンE。厚生労働省によると、1日に摂るべき目安量は、成人男性で6.5mg、成人女性は6.0mgです。
不足すると大変!と心配になりますが、平成27年度の国民健康・栄養調査によると、日本人の摂取量の平均値は目安量を上回っており、偏った食事をしていない限り、心配はなさそうです。
とはいえ、食事に偏りのある方、ストレスの多い生活を送っている方、老化を感じている方、スポーツをされている方などは、より多くのビタミンEを必要としていますので、欠乏しないように心がけると良いと思います。
ビタミンEを多く含む食材のビタミンE量(α-トコフェロール量)をグラフにしましたので、参考にしてください。
PROFILE
監修:平井美穂(ひらいみほ)
管理栄養士 / 食物栄養学修士 / 調理師 / NPO関西ウエルネス研究所理事
平井外科胃腸科クリニック(神戸市東灘区岡本)、その他透析病院等を含め医療機関にて栄養指導を行う。
百貨店・食品メーカー講師、レシピ提案など、乳幼児から高齢者までを対象に幅広い年齢層に対し、食と健康に関する講演会や料理講習会を行う。
管理栄養士
平井先生のひとことコメント
食品100g中のビタミンE量(mg)をランキングすると、以下のように、同じ油でも種類によっても含有量は異なり、お米も胚芽の量に比例することがわかります。
●植物油
39.0ひまわり油
28.0綿実油
27.0サフラワー油(べにばな油)
26.0米ぬか油
13.0サラダ油(調合油)
7.4オリーブ油
1.5有塩バター
0.4ごま油
●ごはん
0.5玄米
0.4胚芽精米
0.25分つき米
0.17分つき米
0.1精白米
より多くビタミンEを摂取しようと思えば、イタリア人のようにパンにはバターを塗るのではなくオイルに浸し、ご飯は精白米より玄米や胚芽のついたお米を選ぶのも得策です。
ビタミンEは、酸や熱に強く調理中の損失は少ないですが、光に弱い性質があるので、直射日光の当たらない暗所や遮光容器に入れて保存しましょう。
酸化した古い油は、逆に過酸化脂質を摂ることになるので極力控えた方が無難です。
手軽にビタミンEが摂れるレシピとして、ビタミンCたっぷりの生野菜やフルーツのサラダに、ハムや卵、ツナ、豆腐などお好みのたんぱく質をのせ、綿実油などビタミンEの多い油のドレッシングをかけ、砕いたナッツをトッピングする「ご馳走サラダ」はいかがですか?
また、ビタミンEの多いモロヘイヤを軽く茹でて細かくたたき、スープ仕立てにして少量の油を落としたり、トマトや卵と合わせてスクランブルエッグやオムレツにしたり。
美味しく食べて健康に。多彩な日々のお食事が、若さや美しさをつくります。