監修:管理栄養士 平井美穂先生
第11回
<ビタミンB群 ②>
それぞれが、いろいろな場所で、代謝など化学反応のサポーターとして働いているビタミンB群ですが、8つのビタミンBが「チーム・ビタミンB群」として、一丸となって働く仕事場があります。それは細胞内の「ミトコンドリア」。
ミッションは「エネルギーを作ること」です。
ミトコンドリアは、私たちが生きていく上で、必要とするエネルギーを生み出す「エネルギー工場」のような存在。1つの細胞内に数百〜数千個単位で存在しています。
エネルギーは、私たちが食べたものから作られます。タンパク質、脂肪、炭水化物などの栄養素が、体内で分解され、様々な化学反応を経て、エネルギーが作られるのです。
上の図のように、分解された栄養素は、脂肪酸やピルビン酸などの小さい分子になり、細胞内のミトコンドリアに入ります。ミトコンドリアの中で、さらに化学反応を繰り返し、その結果として、エネルギーの元、ATP(アデノシン三リン酸)が産出されるのです。
ビタミンB群は栄養素の分解全般、そして、ミトコンドリア内でも様々な化学反応に関わっています。「チーム・ビタミンB群」として、互いに協力しあって働くことで、効率的に化学反応をサポートしているのです。
「チーム・ビタミンB群」はまさに、エネルギー産生の心強いサポーター軍団ですね。
エネルギー産生という、とても重要な役割を担うミトコンドリアですが、驚くことに、ミトコンドリアは、もともと別の生き物だったらしいのです。といっても、まだ人間に進化するはるか前の、真核生物(細胞に核がある生物)だった頃、約20億年前の話です。
核を持たない細菌が、真核生物の細胞の中に入り込んで住み着きました。この時入り込んだ細菌は、酸素からたくさんのエネルギーを作り出すことができる細菌だったので、やがて、その能力を引き継いだミトコンドリアになったというわけです。
細胞内にミトコンドリアをもった生物は、たくさんのエネルギー作り出し、それを使える体になったのです。
もともと別の生き物だったということは、以下のような事実からもわかるそうです。
・ミトコンドリアの内膜の性質は細菌のそれとそっくりである。
・ミトコンドリアは細胞のDNAとは異なる独自のDNAを持っている。
・ミトコンドリアは細胞の分裂とは無関係に、勝手に分裂して増殖する…。
勝手に増殖なんて、まるでホラーのようにも聞こえますね。でも、たくさんのエネルギーを必要とする私たちのような生物が存在できるのは、ミトコンドリアがエネルギーをたくさん作ってくれているから。
ミトコンドリアは、私たち人間にとって、間違いなく、なくてはならない共生者なのです。
PROFILE
監修:平井美穂(ひらいみほ)
管理栄養士 / 食物栄養学修士 / 調理師 / NPO関西ウエルネス研究所理事
平井外科胃腸科クリニック(神戸市東灘区岡本)、その他透析病院等を含め医療機関にて栄養指導を行う。
百貨店・食品メーカー講師、レシピ提案など、乳幼児から高齢者までを対象に幅広い年齢層に対し、食と健康に関する講演会や料理講習会を行う。
管理栄養士
平井先生のひとことコメント
ここ一発ガンバロウ!元気を出そう!と思う時、皆さんは何を食べられますか?
焼肉、大盛りのご飯、トンカツや唐揚げなどの揚げ物ですか?
それらはもちろん元気が出る食べ物なのですが、忘れてはならないのがビタミンB群。
ビタミンB群こそが、私たちの食べた糖質や脂質、たんぱく質などをエネルギーに代えるために補酵素として働き、「活力」を生み出してくれる栄養素なのです。
白米より胚芽米、肉料理にはにんにくや玉ねぎ、ネギを効かせ、納豆とモロヘイヤの和え物に、ぬか漬けをちょいと添えて、なんて献立はいかがでしょう?
また、怪我や運動などで傷ついた筋肉、細胞を修復するにもビタミンB群が活躍します。
美しい肌をつくるのにも必要不可欠。
不足すると疲れやすくなったり、イライラしたり、肌荒れまで起こしてしまうビタミンB群。「活力と美肌のB」と覚えておきましょう。