監修:管理栄養士 平井美穂先生
第13回
<ビタミンE ①>
ビタミンEといえば、抗酸化作用の強いビタミンとして知られています。
「アンチエイジング!」とすぐに反応される方も、特に女性には多いのではないでしょうか。
病気や老化の原因となる酸化を防いでくれることが「若返りのビタミン」と言われる理由です。健康のためにも美容のためにも、ぜひ知っておきたいビタミンですね。
ビタミンEは、分子構造の差でトコフェロールとトコトリエノールの2つに分けられます。それぞれに、α(アルファ)、β(ベータ)、γ(ガンマ)、δ(デルタ)の4種類があり、合計8種類からなる物質です。
これらは小腸で吸収され肝臓に送られますが、α-トコフェロール以外の7つは肝臓で代謝されてほとんど排出されてしまうため、肝臓から体内に再分泌されるのはα-トコフェロールだけ。
そのため、血液中・細胞中の濃度が一番高く、抗酸化作用が一番強いのもα-トコフェロールということになります。
ビタミンには水溶性と脂溶性がありますが、ビタミンEは脂溶性で脂に溶ける性質です。
食事から入ってきたビタミンEは、小腸から肝臓に移動して代謝されるのですが、小腸で脂質とタンパク質の複合体(キロミクロンといいます)に取り込まれた形で肝臓に運ばれます。そのため、脂質やタンパク質と一緒に摂ることで体への吸収率がアップします。
ビタミンEは、動物性食品よりも、ナッツ類や油脂類、葉野菜など植物性食品に多く含まれます。葉野菜の中では、モロヘイヤの含有量が最も多く、ほうれん草やケールの約3倍もあり、100g中の含有量6.5mgは、それだけで1日の摂取目安量を超えています。
酸素を使って得たエネルギーで生きている私たちの細胞は、常に酸化の危険にさらされています。
取り込んだ酸素のうち数%は必ず、細胞を酸化して錆びつかせる活性酸素になってしまうのですから、酸素で得たエネルギーで活動する人間のような生物にとっては、避けようのない宿命ともいえます。
呼吸以外でも、太陽の紫外線や大気汚染、ストレス、タバコやアルコール摂取など、活性酸素は様々な要因で発生すると言われています。
正常な細胞や遺伝子を攻撃してダメージを与え、老化やがん、動脈硬化など様々な病気を引き起こす原因になる活性酸素。
それに対し、人間の体には活性酸素を消去する酵素や、尿酸、アスコルビン酸やメラトニンといった抗酸化物質がもともと備わっていて、何とか体を守っています。しかし残念ながら、これらの抗酸化物質は、20代をピークに加齢とともに減っていってしまうのです。
守ってくれるものが無くなっては大変!そこで、これらに代わって、体内での活性酸素の発生を抑えたり、取り除いたりしてくれる抗酸化物質を取り入れる必要があるのです。
ビタミンEは、脂溶性なので、主に脂質の酸化を防ぎます。中でも、細胞膜の酸化を抑えるのはビタミンEの重要な働きです。
細胞膜とは細胞の内側と外側を仕切っている膜のことで、細胞内のミトコンドリアの膜や核膜などと合わせて生体膜と言いますが、これらの生体膜は主に脂質からできています。生体膜を酸化から守って、細胞の機能を正常に保つという重要な役目を担っているのがビタミンEなのです。
また、酸化した脂質である過酸化脂質ができにくくなるので、血管が健康に保たれます。
血中のLDLコレステロールの酸化を抑えたり、赤血球の破壊を防いだりするので、血栓や動脈硬化、がん、そのほか加齢によって発症しやすい多くの疾患の予防にも効果が期待できるのです。
血管が健康に保たれて血行が促進されることで、肌細胞にも新鮮な酵素や栄養素が届き、くすみが改善するなど、美肌効果が期待できます。
新陳代謝が上がると、肌のターンオーバーが促進されて、シミやソバカスができにくくなり、また保湿効果も期待できそうです。
化粧品にもビタミンEを配合したものが多いのは納得ですね。
また、ビタミンEは性ホルモンの生成や分泌などに関わっており、不足すると不妊のリスクが高まったり、更年期の症状にも影響したりすると考えられています。
ビタミンCは、ビタミンEとならんで抗酸化作用の強いビタミン。脂溶性のビタミンEが細胞膜で働くのに対し、ビタミンCは水溶性のため体液中で働きます。
それぞれの場所で働くこの2つのビタミンは、一緒にとることで相乗効果を発揮し、より作用が高まると言われています。素晴らしい連携プレーですね。
PROFILE
監修:平井美穂(ひらいみほ)
管理栄養士 / 食物栄養学修士 / 調理師 / NPO関西ウエルネス研究所理事
平井外科胃腸科クリニック(神戸市東灘区岡本)、その他透析病院等を含め医療機関にて栄養指導を行う。
百貨店・食品メーカー講師、レシピ提案など、乳幼児から高齢者までを対象に幅広い年齢層に対し、食と健康に関する講演会や料理講習会を行う。
管理栄養士
平井先生のひとことコメント
強い抗酸化力をもち、老化や病気に抗い、血行を改善し、美肌や肌艶などの美容効果まで期待されるビタミンEは、まさに健康長寿に必要不可欠な栄養素ですね。
より多くを摂って効果を望みたいところですが、脂溶性ビタミンは体外に排出されにくい性質があり、摂り過ぎにも注意が必要です。
ビタミンEは自然のあらゆる食品に含まれますので通常の食事を摂っていれば、過剰になることも不足する心配もないと報告されています。ただし、サプリメントなどでとる場合は過剰になる可能性もありますし、極端に偏った食事やダイエットなど厳しい食事制限をしていれば不足することも考えられます。
ビタミンEの多い食品としては、代表的なものに植物油やナッツ類が挙げられますが、これらはカロリーも高い食品なので、摂り過ぎると肥満や生活習慣病につながる可能性も出てきます。適量を心がけ、あらゆる食品からまんべんなく「不老長寿の素」をいただきましょう。
緑黄色野菜であるモロヘイヤは、ビタミンE量がトップクラスであるだけでなく、同様の抗酸化作用をもつビタミンCやビタミンA(β-カロテンから変換)も合わせ持つため、相乗効果で一段と強力な抗酸化作用が期待されます。
食べ過ぎや肥満の心配もなく、健康、美容、若返りが望めるなんて本当に有難い野菜ですね。