監修:管理栄養士 平井美穂先生
第4回
<食物繊維 ③>
最近注目されている腸内細菌の重要な働きの一つに、免疫力のアップがあげられますが、食物繊維は、体の免疫システムにも大きく関わっていることがわかってきました。
免疫細胞は、食べ物と一緒に入ってくる病原菌やウイルスなどの外敵を撃退します。そのため、免疫細胞の60%〜70%が、食べ物の栄養を吸収する器官である腸に集まっています。
免疫細胞は、良質な腸内細菌(善玉菌)によって活性化して免疫力が高まりますが、食物繊維は腸内細菌のエサになり、腸内環境を整えることで、免疫システムに貢献しています。
一方、免疫細胞が暴走して、攻撃すべきでないものまで攻撃してしまうことによる病気が増えています。アレルギーや自己免疫疾患といわれるものです。
歩行困難や失明の恐れのある「多発性硬化症」のような難病も、免疫細胞が暴走し、脳などの細胞を攻撃することが原因と考えられています。
食物繊維は、外敵から体を守る免疫細胞も増やしますが、反対に、免疫細胞の暴走を食い止める働きにも関係していることが最近の研究で明らかになってきました。
暴走を食い止めるしくみには、腸内細菌(酪酸産生菌)のひとつであるクロストリジウム属の「クロストリジウム・ブチリカム」が関係しています。
クロストリジウム・ブチリカムは、腸内の食物繊維やオリゴ糖などを食べて酪酸を作ります。この酪酸が腸壁の内側にいる免疫細胞に受け取られると、「Tレグ」という特別な免疫細胞に変化します。
そして、この「Tレグ」こそが、他の免疫細胞の過剰な攻撃を抑える役割を担っているのです。
ここでも食物繊維は、腸内細菌の活躍になくてはならない栄養素ということになりますね。
PROFILE
監修:平井美穂(ひらいみほ)
管理栄養士 / 食物栄養学修士 / 調理師 / NPO関西ウエルネス研究所理事
平井外科胃腸科クリニック(神戸市東灘区岡本)、その他透析病院等を含め医療機関にて栄養指導を行う。
百貨店・食品メーカー講師、レシピ提案など、乳幼児から高齢者までを対象に幅広い年齢層に対し、食と健康に関する講演会や料理講習会を行う。
管理栄養士
平井先生のひとことコメント
腸内細菌が免疫や脳(精神)にも多大な影響を及ぼす「脳 - 腸 - 微生物相関」の関係が科学的に証明されてきました。
一般的に、腸内細菌は、悪玉菌10%、善玉菌20%、日和見菌(身体が弱ると悪影響を与える菌)70%くらいの割合が良いとされます。
この腸内細菌のバランスは、食生活のほか、ストレスや加齢、抗生剤の使用など様々な要因で日々大きく変化します。
その善玉菌を活性化させ、腸内環境を良好に整えるために最も重要なのが食物繊維。特に水溶性の食物繊維が大切です。
善玉菌を含む食材、和食でおなじみの納豆、酢、みそ、しょうゆ、日本酒、ぬか漬けやヨーグルト、チーズ、キムチなどの発酵食品と合わせて、善玉菌のエサとなる植物性食品を積極的に組み合わせましょう。