監修:管理栄養士 平井美穂先生
第3回
<食物繊維 ②>
食物繊維は大きく2つの種類に分けられます。
その2つとは「不溶性食物繊維」と「水溶性食物繊維」。それぞれ、まったく違う作用があります。
不溶性食物繊維は、水に溶けずそのまま腸に届きます。
便の量を増やし、腸の壁を刺激して腸を動かし排便を助けます。
有害物質を体から排出する働きもあります。
水溶性食物繊維は、水に溶けてネバネバになるものと、サラサラになるものがあり、粘性・吸着性があります。
大腸内で発酵・分解され、腸内細菌を増やして腸内環境を整えます。
食物繊維を摂ることで、食後の血糖や中性脂肪の上昇が抑えられ、肥満、糖尿病、動脈硬化などの疾患の予防になることがわかっています。
食物繊維は、水分を吸収・膨張することや、粘性・吸着性があることで、食べ物の消化管内の移動を遅らせるので、脂質や糖質の吸収がゆっくりとなり、抑えられるのです。
また、食物繊維が大腸がんを予防するしくみについても研究が進んでいます。
大腸がん発生率は脂肪摂取量と比例しますが、脂肪を消化するために作られる胆汁酸※1が大腸内で変化して、がんの原因となる二次胆汁酸になります。
不溶性食物繊維は二次胆汁酸を吸着して体外に排出し、水溶性食物繊維は大腸内の善玉菌を増やすことで、二次胆汁酸の発生吸収を抑えるのです。
今年(2020年)1月、国立がん研究センターが発表した論文によると、45歳〜74歳の日本人約9万人を対象に行った調査で、食物繊維の摂取量が多いほど、死亡リスクが低くなることが明らかになったそうです。(男性で約23%、女性で約18%も死亡率が下がったという結果が出ています)
欧米でも同じような調査結果が出ていますが、欧米では「穀物」からの食物繊維摂取で死亡リスクが下がっているのに対し、日本では穀物よりも「豆・野菜・果物」からの摂取による死亡リスク低下が顕著です。
日本人が多く食べる穀物「精白米」は食物繊維が少なめなので、穀物に頼らず、豆・野菜・果物をたくさん摂ることが重要だということです。
このように、次々と重要性が明らかになり注目される食物繊維。
目が離せない栄養素の一つですね。
PROFILE
監修:平井美穂(ひらいみほ)
管理栄養士 / 食物栄養学修士 / 調理師 / NPO関西ウエルネス研究所理事
平井外科胃腸科クリニック(神戸市東灘区岡本)、その他透析病院等を含め医療機関にて栄養指導を行う。
百貨店・食品メーカー講師、レシピ提案など、乳幼児から高齢者までを対象に幅広い年齢層に対し、食と健康に関する講演会や料理講習会を行う。
管理栄養士
平井先生のひとことコメント
不溶性食物繊維は、かみごたえのある根菜類や雑穀、芋、豆、きのこ類に多く含まれます。よく噛む必要があるため、食べすぎを防ぎ、肥満解消にも役立ちます。
水溶性食物繊維は、粘りやヌメリのある海藻や野菜、果物、芋、豆類に多く含まれます。
果物に含まれる「ペクチン」や、こんにゃくに含まれる「コンニャクマンナン」、海藻やモロヘイヤ、オクラなどのヌルヌルした成分も水溶性食物繊維です。腸内細菌の働きでオリゴ糖などに代謝され、人体に有益な働きをします。
中でも、モロヘイヤに含まれる食物繊維は、生100g中、不溶性4.6g、水溶性1.3g。オクラ(生100g中:不溶性3.6g、水溶性1.4g)や、納豆(糸引き納豆100g中:不溶性4.4g、水溶性2.3g)と同様に、両方の食物繊維をバランスよく、しかも豊富に含む野菜であることがわかります。