監修:管理栄養士 平井美穂先生
第9回
<カルシウムと骨の話 ③>
欠乏すると、骨粗しょう症や高血圧、動脈硬化などを招くことがあるので、十分に摂りたいカルシウムですが、体に吸収しにくいという弱点があります。
一緒に摂るとカルシウムの吸収率を上げてくれる栄養素がいくつかありますので、今回はそれをご紹介します。
腸管からのカルシウム吸収をサポート。血液中のカルシウムを骨に運び、骨を作る骨芽細胞の働きを促進して、骨の形成を助けます。
イワシ、サケ、しらす干し、干し椎茸、乾燥キクラゲ
骨にカルシウムを取り込むために必要な物質を活性化。骨の形成をサポートします。またカルシウムが尿中に排出されるのを抑え、骨の破壊を防ぎます。
納豆、ひじき、ワカメ、モロヘイヤ、バジル、ホウレンソウ、コマツナ
タンパク質や遺伝子情報を持つ核酸を合成する。骨の強度を支えるタンパク質の形成にとって重要な栄養素です。
のり、乾燥わかめ、納豆、いちご、鶏レバー、枝豆、モロヘイヤ、ホウレンソウ、ブロッコリー、アスパラガス、春菊
マグネシウム自体が骨を作る成分であり、骨芽細胞の働きを促進して、骨に入るカルシウム量の調節を行っています。そのため、マグネシウムが不足すると、カルシウムがあっても、骨の形成に役立ちません。
アーモンド、カシューナッツ、乾燥わかめ、ひじき、しらす干し、納豆、木綿豆腐、枝豆、ホウレンソウ、モロヘイヤ
ある種のタンパク質は、カルシウムを骨に吸着させる働きをします。複数の種類の良質なタンパク質を摂ることで、強い骨を作ります。
魚類、肉類、卵、豆類、納豆、乳製品
エストロゲンは、骨からカルシウムが溶け出すことを抑えるホルモンですが、女性の場合、閉経や生理不順で激減してしまいがちです。イソフラボンを摂ることで、エストロゲンの働きを補うことができます。
大豆、大豆飲料、納豆、豆腐、油揚げ
さて、ここで注目すべきは、カルシウムが豊富なモロヘイヤが、カルシウムの吸収率を上げると言われている栄養素も豊富に含んでいるということです。
モロヘイヤは緑黄色野菜のなかでも、カルシウムが多い(生葉の場合260mg/100g)上に、骨の形成に有効とされる、ビタミンK(640μg/100g)や葉酸(250μg/100g)、マグネシウム(46mg/100g)を豊富に含んでおり、タンパク質も4.8g/100gですが含まれます。
*日本食品標準成分表2015年版(七訂)を元に計算した数値
骨の元気のために食べるべき食品の、野菜部門の筆頭はモロヘイヤで決まり、ではないでしょうか。
PROFILE
監修:平井美穂(ひらいみほ)
管理栄養士 / 食物栄養学修士 / 調理師 / NPO関西ウエルネス研究所理事
平井外科胃腸科クリニック(神戸市東灘区岡本)、その他透析病院等を含め医療機関にて栄養指導を行う。
百貨店・食品メーカー講師、レシピ提案など、乳幼児から高齢者までを対象に幅広い年齢層に対し、食と健康に関する講演会や料理講習会を行う。
管理栄養士
平井先生のひとことコメント
努めて摂ったカルシウム、無駄にしたくないですね。カルシウムの吸収を高めてくれる栄養素と食べ合わせましょう。
酢や柑橘類、果物や梅干しに多く含まれる「クエン酸」もカルシウムを溶かし出して吸収を高めてくれますよ。
「鮭ときのこのミルクシチュー」「新鮮な果物を入れたヨーグルト」「納豆としらすの黒酢かけ」「煮干し出汁の味噌汁に豆腐や海藻、しじみなどの具材を入れる」「鍋やスープ、飲み物に牛乳や豆乳を加える」など、普段の食事に少しの工夫で骨太パワーアップレシピに早変わり!
逆にカルシウムの吸収を妨げるものは、リン、カフェイン、アルコール、食塩などが挙げられます。
リンはたんぱく質の摂り過ぎや加工食品に偏ることで過剰になります。インスタント食品やスナック菓子、ハムやソーセージなどの加工品はご利用を控えめに。
アルコールは飲み過ぎないよう適量にして、塩分は減塩を心がけ、カフェインを多く含む珈琲、紅茶、緑茶などは食後30分ほど経ってから楽しむとより健康的です。
栄養の宝庫モロヘイヤは骨太効果もオールインワン!積極的に摂りたい野菜です。