リサーチとポスター発表を担当したのは、甲南大学理工学部機能分子化学科の田中靖貴さん。研究タイトルは「モロヘイヤ中に含まれる抗酸化物質の評価と栽培地域と部位による比較」。
物質が酸素と結びつく反応のことを「酸化」といいます。私たちの体内でも酸化はおこっています。身体は時間と共に老化しますが、老化は体内で作られる活性酸素によって細胞が酸化することでおこります。活性酸素が著しく増えると、がんや動脈硬化をはじめ、様々な病気を引き起こしますが、これらの病気も広義では老化と考えられます。
「抗酸化」とは、細胞を酸化から守る作用のこと。活性酸素を減らしたり、酸化を抑えたり、酸化によるダメージを修復したりすることです。この作用の大きさを「抗酸化能」、そのような作用を持つ物質を「抗酸化物質」と呼びます。
田中さんの発表によると、今回の研究により、モロヘイヤが高い抗酸化能を持っていることが確認されたそうです。
評価方法には、活性酸素によって分解される色素(フルオレセイン)を使っています。フルオレセインに活性酸素を加え、色素が分解される速さを測定するものですが、そこに抗酸化物質を加えることで、分解の速さがどれだけ遅くなるかを測ります。これによって、抗酸化能を調べるというものです。
測定結果としては、ポスター右下の「考察」にあるように、以下の点が確認されました。
① モロヘイヤは他の野菜を比較しても非常に高い抗酸化能をもつ
② モロヘイヤの抗酸化能は、茎部分は低く葉部分が高い
③ フィリピン産およびエジプト産のサンプルは、乾燥後、現地から移送されたにも関わらず、高い抗酸化能を維持している
詳しくは、下のポスターをご覧ください(画像をクリックすると拡大表示できます)。
田中靖貴さんのポスター発表後、田中さんのリサーチを指導された、理工学部教授で理学博士の茶山健二先生にお話を伺いました。
田中さんの研究結果に関して、モロヘイヤの抗酸化能の高さには、茶山先生も驚かれたそうです。さらに、フィリピンとエジプトのモロヘイヤを原料とするサプリについては、現地で熱風乾燥させたモロヘイヤを使っているにもかかわらず、高い抗酸化能を示したことから、原料となったモロヘイヤの生葉の状態での抗酸化能はとても高いことが予想されるとおっしゃっていました。
甲南大学は、論文のクォリティの高さで定評のある大学です。世界的な科学系出版社であるシュプリンガー・ネイチャー社が、自然科学系の学術ジャーナルに発表された論文のクォリティをランキングする、ネイチャーインデックスという指標がありますが、甲南大学は、ネイチャーインデックスジャパン2018※2において第7位、大学だけのランキングでは、学習院大学、東京大学に次いで第3位に選ばれていることでも証明されています。
「大学には研究のシーズ(種)がたくさんあります。このシーズを提供することで社会に貢献したい。」と茶山先生はおっしゃっています。
今回の、甲南大学と株式会社青粒の産学連携で行われたモロヘイヤの抗酸化能の研究では、素晴らしい結果が出ましたが、モロヘイヤの高い抗酸化能を証明するには、さらにサンプル数を増やし、引き続き調査を行うことが必要です。モロヘイヤにはまだまだ解明されていないパワーがありそうです。今後も甲南大学と株式会社青粒とのコラボレーションによるモロヘイヤ研究に期待しています。