モロヘイヤ効果研究所
小柳津広志

病気で死なないための
3つの方法

東京大学名誉教授

小柳津 広志 先生

腸内細菌が全身の健康状態を左右しているという事実が徐々に明らかになり、さらなる研究が日進月歩で進んでいますが、最近注目の腸内細菌といえば酪酸菌(らくさんきん)です。

健康長寿で有名な町、京都府京丹後市で100歳超の長寿者の腸内細菌を調べたところ、酪酸菌の割合がとても多かったという調査結果もあり、酪酸菌は「長寿菌」などとも呼ばれるようになりました。

酪酸菌でなぜ病気が治るのか、酪酸菌を増やすにはどうしたらいいのか、『東大の微生物博士が教える 花粉症は1日で治る!』『東大の微生物博士が教える コロナに殺されないたった1つの方法』の著者、東京大学名誉教授の小柳津(おやいづ)広志先生にお話を伺いました。

健康ではない高齢者があまりにも多くて驚いた!

先生は62歳で東京大学を早期退職して、こちらのカフェを始められたそうですね。

小柳津:高齢者の健康をサポートするような事業を立ち上げたいと思って早期退職し、減塩食を中心に健康に良い食事を提供するお店「カフェ500」を開きました。

ところが高齢のお客さんたちの話を聞くと、60代前半の人たちでさえ、糖尿病を患っている、膝が痛い、背中が痛い、皮膚炎がある、などと様々な不調を抱えている人があまりにも多く、驚きました。とても食事だけではこの人たちの不調を治せないと思いました。

それで、お客さんたちの不調を治す方法を探り出したのですね。

小柳津:はい。現職時代、腸内細菌の研究をしてきた知識をもとに、お客さんにいろいろな食事を試していただき、その結果どう変化したかなどをヒアリングしました。

だいたいの病気の治し方がわかった!

小柳津:カフェのお客さんで人体実験していたようなものです(笑)。いろいろ試しているうちに、だいたいの病気の治し方がわかってきました。

それはすごいですね!病気とその治し方についてご説明いただけますか?

小柳津:病気は原因で分けると次の3つに分けられます。

「炎症によって起こる病気」
「微生物の感染で起こる病気」
「老化で起こる病気」

炎症によって起こる病気は酪酸菌で治す

小柳津:炎症によって起こる病気とは、まず、アレルギーや関節リウマチといった自己免疫疾患などです。

これまで腸内環境の研究をしてきたので、酪酸菌がアレルギーを治すことは何十年も前から動物実験でわかっていました。酪酸菌がTレグ細胞を増やし、Tレグ細胞が炎症、免疫の暴走を抑えるためです。

そこで、アレルギーのある人たちに、腸内で酪酸菌を効果的に作るフラクトオリゴ糖を1日10~20g 食べてもらったところ、花粉症などのアレルギーはすぐに治ることが確かめられました。

フラクトオリゴ糖が酪酸菌のエサになるわけですね。

小柳津:そうです。ですが、酪酸菌の効果はそれだけにおさまりませんでした。

フラクトオリゴ糖をいろいろな人に食べてもらっているうちに、「うつ病が治りました」「パニック障害が治りました」など、アレルギーとは関係のない病気が良くなったという報告が相次ぎました。

最近の研究では、多くの精神疾患の原因は脳の炎症だとする説が有力です。うつ病、パニック障害、睡眠障害、自律神経失調症などの疾患が、酪酸菌で脳の炎症が抑制されたために良くなったと考えられます。

病院での精神疾患の治療には、精神安定剤や睡眠導入剤などが使われます。炎症を抑える薬というとステロイドが使われますが、なかなか根本的には良くなりませんし、高血圧、糖尿病、骨粗鬆症、ムーンフェイスなどの副作用が多いという問題もあります。そういった副作用の緩和にもフラクトオリゴ糖が役立つということが、お客さんの証言からわかってきました。

なるほど、フラクトオリゴ糖の力、すごいですね。ところで、腸内細菌の中で酪酸菌が占める割合として、どのくらい必要なのでしょうか?

小柳津:100歳以上の長寿者の腸内細菌を調べると、酪酸菌が50%程度を占めます。これに対し、一般的には10%程度。ほとんどの人が、もっと酪酸菌を増やすように心がけるといいと思います。

小柳津広志先生

小柳津広志先生。手に持っているのは、カフェ500で販売されているフラクトオリゴ糖「長沢オリゴ」。

微生物の感染で起こる病気はビタミンDで治す

小柳津:多くの病気が、微生物(細菌やウイルス)の感染が原因で起こるのですが、意外と知られていないので、感染に気がつかないことも多いようです。

ピロリ菌による胃がん、マラセチア菌による頭皮湿疹、アクネ菌によるにニキビ、パピローマウイルスによる子宮頸がん、白癬菌による水虫、溶連菌による上咽頭炎、歯周病や副鼻腔炎など、微生物の感染で起こる病気は無数にあります。

さらに悪いことに、1つの病気が他の重篤な病気を引き起こすこともあります。マラセチア菌は頭皮湿疹だけでなく、すい臓がんを起こしますし、上咽頭炎が腎臓の病気を起こしたり、歯周病がリウマチを起こしたり、という具合です。

微生物の感染を抑えるにはビタミンDが必要です。

ビタミンDは生物が本来持っているべきビタミン。日光を浴びることにより体内で作られます。

人間に限らず生物には様々な微生物が侵入してきますが、ビタミンDが十分あれば、微生物の活動が抑えられて病気にはなりません。しかし現代人は日光に当たる時間が短くなってビタミンDが不足しているために、侵入した菌を殺すことができず、病気を発症するのです。

ビタミンDを作るには、日に当たるのがいいということですが、皮膚ガンを恐れて紫外線に当たらない、日焼けが嫌で肌を出さない人も増えていますよね。

小柳津:腸内に酪酸菌が十分いれば、日に当たっても炎症を起こさないので、皮膚ガンのリスクも抑えられますし、日焼けで皮膚が赤く腫れるなどということは無くなります。ここでも酪酸菌が有効です。

日に当たる時間が十分取れない場合、ビタミンDは食べ物で増やすことはできますか?

小柳津:ビタミンDは、魚などを食べることで摂取できますが、日に当たる方がたくさん作られます。食べ物で十分な量のビタミンDを取ろうとすると、魚を1kgくらい食べなければならないと思います。日に当たる時間が少ない人はサプリメントでビタミンDを補うといいと思います。

カフェ500

老化による病気を遠ざけるには、糖質制限

小柳津:老化によって起こる代表的な病気は、認知症、糖尿病、動脈硬化などです。

老化を抑えるには、血糖値を上げないことです。糖質制限で驚くほど多くの病気が治るので、みなさんに勧めています。カフェ500で「糖質制限食料理講習会」を行いさまざまな病気を治してきました。

糖質制限で血圧はすぐに30~40くらい下がりますし、2型糖尿病も数ヶ月で良くなります。

脳梗塞や心筋梗塞を起こす動脈硬化は、血管の炎症反応で起きますが、炎症部位に沈着する酸化LDLは中性脂肪が多いと増えます。糖質制限で中性脂肪を減らすと動脈硬化は起きません。

認知症について言えば、血糖値が下がると海馬の神経細胞の分化が促進され、血流がよくなることで記憶力が改善されるなどの効果があります。

なるほど。炎症、微生物感染、老化の3つで、かなりの病気が網羅されていますね。そしてこれらは、酪酸菌、ビタミンD、糖質制限によって抑え込むことができるということなのですね。

小柳津:今はみなさん病気で亡くなっています。病気を治すことができれば、人は健康のまま天寿を全うし老衰で亡くなるまで生きられるのです。

新型コロナ感染症にも酪酸菌

先生は新型コロナ感染症の対策にも酪酸菌を増やすことが有効だとお考えですね。そしてそのためには酪酸菌をもっとも効率よく増やすフラクトオリゴ糖を摂るのがいいとお勧めされていますね。

小柳津:酪酸菌でTレグ細胞が増え、同時に自然免疫活性が上がり感染しにくくなるはずなので、まずコロナ感染予防にいいと思います。また、肺炎を起こした感染者の炎症を抑えるのに、医療現場ではステロイドが使われると思いますが、ステロイドは炎症を抑えても細菌を増殖させてしまう可能性があるのが恐ろしいところです。

Tレグ細胞で炎症を抑えれば、そもそも肺炎になりにくいですし、サイトカインストームも起きにくく、また細菌が増殖してしまうこともないので、重篤化を防げるはずです。

フラクトオリゴ糖を摂って、酪酸菌を増やしておくことが、コロナ対策に必要なことだと思います。

実は、お客さんから「糖尿病を持っていて新型コロナに罹ったけれど、1日か2日で良くなった」という、酪酸菌の効果を裏付けるような報告も届いています。

ワクチンの接種が進んできましたが、副反応の情報も多く、怖いと思っている方も少なくないようです。

小柳津:ワクチンの副反応に関しても、Tレグ細胞の炎症を抑える働きで、発熱や痛みが軽減されると思います。

炎症さえ抑えれば治る病気は多い

今までお話しを伺って、いろいろな病気を引き起こしたり悪化させたり、体の「炎症」がとても怖いものだということがわかりました。

小柳津:そうです。炎症を抑えるTレグ細胞が増えることで治る病気が、お話しした以外にもたくさんあります。

喘息や光線過敏症、食物アレルギー、ペットアレルギー。虫刺されも炎症が起こらなければ腫れません。潰瘍性大腸炎もすぐに治ります。リウマチも、原因となる微生物を除去した後にTレグ細胞で炎症を抑えればすぐに治ります。

こうしてみると、炎症系の疾患がとても多いことがわかりますが、そもそもこうした病気が増えている背景には何がありますか?

小柳津:抗生物質の使い過ぎで酪酸菌が減ってしまっていることが大きいと思っています。抗生物質は、本当に必要な場合を除いて、極力使わないようにした方がいいのです。やむを得ず使った場合は、食物繊維をたくさんとって、酪酸菌などの腸内細菌を増やすことです。

実は、モロヘイヤの粉末を固めた「青粒」という商品の臨床試験で、酪酸菌が増えたという結果が出ています。また、それを飲んでいるお客様から、アレルギー症状が軽減されたというお声もいただいています。フラクトオリゴ糖でなくても、酪酸菌は増えますか?

小柳津:はい。食物繊維をたくさんとることで、腸内の酪酸菌を増やすことができます。アレルギーが改善したということであれば、青粒の食物繊維の中に、酪酸菌を増やす食物繊維、例えばアラビノガラクタンやフラクタンが含まれているのかもしれません。ぜひ、分析機関で分析してみてください。

栄養に関しての教育をもっとすべし!

先生は著書に、「中学・高校生にもっと栄養のことを教えるべき」と書かれていましたが、同感です。栄養と健康は直結しています。健康でいるために栄養について知ることはとても大事ですね。

小柳津:食べ物に気をつけることでいろいろな病気を予防できるので、本来それほど頻繁に病院に行かなくていいはずなんです。

例えば、「糖質制限だけで高血糖の症状が緩和して、とても楽になる」などはいい例です。

糖質制限で力が出ないという人がいますが、逆だと思います。力が出るし、持久力もつきます。血糖値が上がらずインスリンが脳に入りやすくなるので、海馬の幹細胞が分化して神経細胞が増え、集中力も記憶力も良くなる。そういうことを知らないのはもったいないことだと思います。

次の本では、具体的に病気の治し方を書きます。それと調理法も載せて、実用的な本になる予定です。

次回作、とても楽しみです。今日は、体の炎症と酪酸菌について詳しくお話しいただき、ありがとうございました。

カフェ500
長沢オリゴ

長沢オリゴ

「長沢オリゴ」は、酪酸菌を増やすことを目的に、小栁津先生が開発した粉末のオリゴ糖です。原材料はフラクトオリゴ糖とガラクトオリゴ糖のみ。
スーパーなどに並んでいる甘味料としてのオリゴ糖とは違って甘みは少なく、またブドウ糖ではないので、血糖値が急上昇することもありません。
摂取の目安は1日10~30g(ティースプーン3~9杯)。飲み物に入れたり、料理に使ったりして摂ることが推奨されています。

販売:おやいづ製茶/雅正庵(がしょうあん) 
TEL:054-268-1123

● 商品についてのお問い合わせ
株式会社ニュートリサポート 
TEL:046-874-8088

小柳津 広志 先生 プロフィール

東京大学名誉教授。農学博士。微生物学博士。
株式会社ニュートリサポート代表取締役。
東京大学農学部農芸化学科卒業。専門は微生物系統分類、腸内細菌学など。腸内微生物と微生物系統進化の分野で論文を多数発表。世界各国の微生物研究者に高く評価され、イリノイ大学留学を経て、43歳という異例の若さで東大教授となる。
2016年に東京大学を退職。2017年、神奈川県横須賀市に高齢者のための減塩カフェ「カフェ500」をオープン。2018年から「長沢オリゴ」を販売。

『東大の微生物博士が教える 花粉症は1日で治る!』

『東大の微生物博士が教える コロナに殺されないたった1つの方法』

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