一般社団法人 日本美腸協会 代表理事 小野咲 さん
腸の働きが、全身の健康に深く関わっていることは、今や常識。
「腸活」という言葉が広く認知されるほど、腸の健康に注目が集まり、腸に関わる研究も日進月歩です。
それでも一筋縄ではいかないのが腸活。腸の状態はひとりひとり全く違う上に、食生活やストレス、睡眠や運動など様々な理由で、日々変化してしまうから。
「正しい知識を持って腸をケアできる人を増やしていこう」という取り組みをしている団体、一般社団法人 日本美腸協会の代表理事、小野咲さんにお話を伺いました。
小野さんの前職は看護師。小児専門の救急医療の現場で働く中、手術後に小腸の機能不全で命を落とすケースを何度も目の当たりにし、腸が大事だと痛感されていました。
もともと便秘がちのご自身の体調も、ストレスや夜勤など不規則な生活が影響して悪化。健康を見直し、腸の勉強を始めるきっかけになったのだそうです。
腸の勉強を始め、腸に良いとされていることを片端から試した小野さん。時には便秘解消のために、プルーンを1回一袋食べていたこともあるのだとか。
しかし、極端な便秘解消法や下剤など体を痛めつける方法は、根本的な解決につながらないと実感していました。
そんなとき偶然知ったのが「腸もみ」。自分の腸をマッサージする「腸もみ」に可能性を感じ、マッサージ方法を研究。服の上からだった腸もみを、素手で直接お腹に触れるようにするなど、試行錯誤を重ね、独自のやり方を確立していったそうです。
「自分のお腹を触ってみてください。体の状態など、いろいろなことがわかるようになってきます」と小野さんは言います。
「便秘のときは、腸が硬い。便が詰まっていることもありますが、腸の蠕動(ぜんどう)が弱くなっているのです。筋肉と同じように動いていないと硬くなります。お腹が冷たい時は、血流が悪くなっている証拠。頻繁に触っていると、その時々での違いがわかるようになります」
自分の体と向き合うこと。感じること。体の「今」の状態を知ることが健康管理につながるのだそうです。
便秘についてもっと勉強したいと思い転職した便秘外来には、全国各地から毎日たくさんの患者さんが訪れていました。中には便が1ヶ月出ないなど、深刻な症状の方も。
ここで学んだことは、「1つの方法」「短期間」では腸は良くならない、ということ。
治療方法は、腸の動きを損なわない薬を処方しつつ、生活のリズムを整え、食生活を見直し、運動やストレッチを取り入れて、長い時間をかけて、体質改善していくサポートだったのです。
全国には隠れ便秘の人が1200万人いると推定されています。
便秘を治すことによって、生活のあらゆる面でパフォーマンスが上がることは疑いの余地はありませんが、便秘の人がみんな、便秘外来で治療できるわけではありません。
そこで、「身近な人が、腸のケアをしてあげられたら素晴らしい」という考えから、2013年、「一家に一人の美腸プランナー」を育てることを目標とした日本美腸協会が誕生しました。
小野さんは言います。「健康は、新薬とか、大きな製薬会社が作るのではなく、身近な人の愛情の一押しが作るものです」
日本美腸協会では、腸に関する専門的な知識を身につけ、腸もみをはじめとするケアの技術を習得した会員が、それを伝え広め、毎日の生活から健やかな心と体を育むサポートをする活動を行っています。
自分自身や家族のために役立てる、他人にアドバイスする、講師として広く伝えていく、など目標に合わせたコースが用意され、受講後にはそれぞれの資格を得ることができます。
1200万人の隠れ便秘と言いますが、これから高齢化が進むと、ますますその数が増えることは必至です。
現在会員数1万人の美腸協会。当面の目標は2万人に増やすこととのこと。自分のために、身近な人のために、便秘に苦しむ人のために。
みなさんも、日本美腸協会で腸の健康の専門家を目指してみませんか?
小野 咲さん プロフィール
2007年から小児緊急病棟で看護師として勤務後、便秘外来のある小林メディカルクリニックで勤務。2012年に薬を使わずにおなかの悩みを改善する腸のマッサージを開発、美腸エステ「GENIE」を創業。2013年に一般社団法人日本美腸協会を設立。代表理事に就任。