監修:管理栄養士 平井美穂先生
第7回
<カルシウムと骨の話 ①>
カルシウムは、体の中に最も多く存在するミネラルです。
99%は骨や歯などの硬い組織の中にあり、残り1%が血液や筋肉の中にあります。
血液や筋肉の中のカルシウムは、主にカルシウムイオンとして存在します。
カルシウムはよく知られたミネラルなので、「牛乳やヨーグルトにたくさん入っているのよね」とか「骨を作るものでしょ?」とか、みなさん、その役割もよくご存知ですね。
でも、骨や歯の材料になるという役割以外にも、多くの役割を担っていることは、意外と知られていません。
骨や歯を作る以外に、カルシウムには以下のような役割があります。
・筋肉を収縮させる
・酵素を正常に働かせる
・血液を凝固させる
・心筋の機能を正常に保つ
・体内のイオンバランスを正常値に保つ
・体内の浸透圧を一定に保つ
重要な役割ばかりですね。これらの役割のスイッチの役目を果たしているのが血液中のカルシウムイオンですが、カルシウムイオンは汗や尿として排出されてしまうため、不足しがちなのです。
カルシウムの99%が存在する骨や歯は、カルシウムの貯蔵庫のようなもの。必要な分だけカルシウムを血液中に溶け出させて、不足分を補います。
硬くて、ずっと変わらないように見える骨ですが、カルシウムの出し入れを繰り返しながら、皮膚と同じように新陳代謝を行っているのです。
その速度は1日約1gずつ。個人差がありますが、成人の場合、約3年〜5年で全身の骨が入れ替わるといわれています。
常に新しい骨を作るためには、成長期の子供だけでなく、誰もが十分にカルシウムを補給しなければなりません。
厚生労働省の「日本人の食事摂取基準(2015年版)」によると、食事から摂取が必要なカルシウムの推奨量は成人で650〜800mgくらい。育ち盛りの子供ではもっと多く、12〜14歳の男性では1000mgとされています。
カルシウムは欠乏すると、骨粗しょう症や高血圧、動脈硬化などを招くことがあります。しかし、実際はほとんどの年代で推奨量に達していないのが現状です。
今回は「私たちの体は常にカルシウムを補給し続けなければならない」ということがわかりました。
次の<カルシウムと骨の話2>では、どのように摂取したらいいのか、お話します。
PROFILE
監修:平井美穂(ひらいみほ)
管理栄養士 / 食物栄養学修士 / 調理師 / NPO関西ウエルネス研究所理事
平井外科胃腸科クリニック(神戸市東灘区岡本)、その他透析病院等を含め医療機関にて栄養指導を行う。
百貨店・食品メーカー講師、レシピ提案など、乳幼児から高齢者までを対象に幅広い年齢層に対し、食と健康に関する講演会や料理講習会を行う。
管理栄養士
平井先生のひとことコメント
大きなくしゃみをしたら肋骨が折れた、手をついたら手首が折れた … 外科で仕事をしていれば珍しくない話。
体形や血液のことは気にしても、骨や筋肉については無関心な方が多いですね。
骨や筋肉は建物でいえば柱や梁。そこが弱れば建物は倒壊し、自立した生活は送れなくなります。
骨や歯のみならず、筋肉や脳、血圧、神経にも重要な影響を及ぼすカルシウム。
カルシウムの摂り方が少ないと、骨を溶かして血中カルシウム濃度を一定に保とうとするため骨の粗しょう化が進みます。魚や野菜、豆の摂り方が少ない現代では、カルシウムの摂取不足による骨粗しょう症の増加が問題となっています。
カルシウムを多く含む牛乳・乳製品、魚や緑黄色野菜、豆類を積極的に摂るよう心がけましょう。