監修:管理栄養士 平井美穂先生
第1回
モロヘイヤは、インド西部から北アフリカが原産地と考えられており、高温にも耐える強い生命力を持つ植物で、エジプトでは昔から体に良い野菜として食されてきました。
10世紀から12世紀頃まで北アフリカ一帯を支配したイスラム王朝、ファーティマ朝のカリフが病にかかり、医者の処方でモロヘイヤをスープにして食べ続けたところ、全快したという逸話が残されています。
その後、この野菜はアラビア語で「ムルーキーヤ(王様の野菜)」と呼ばれ、それが「モロヘイヤ」の語源になったという説もあります。
フィリピンの一部の地域では、モロヘイヤを食べると長生きできるとされ、「神の恵みの野菜」と言われるそうです。
モロヘイヤが本格的に日本に入ってきたのは1980年代。他の野菜とは比較にならないほどの、その驚くべき栄養価の高さから「健康野菜」として人気が急上昇し、「野菜の王様」とまで言われるようになりました。
にんじんは、β-カロテンが抜群に多いといわれますが、にんじんのβ-カロテン量を上回るのがモロヘイヤ!(にんじん:100g中 6900μg、モロヘイヤ:100g中 10000μg)
β-カロテンだけでなく、ビタミンEはケールの約2.7倍、カルシウムはなんといわし(まいわし・生)の約3.5倍も含まれます。
その他にも、鉄、マグネシウム、銅、亜鉛などのミネラル、葉酸を含むビタミン類もバランス良く含まれ、植物性食品がもつほとんどの栄養素を含みます。
栄養素は単体で摂るよりも多種類を同時に摂る方が吸収は良くなり、働きも相乗効果が期待できるので、その意味でもたくさんの種類の栄養成分を含むモロヘイヤは理想的な野菜なのです。
特筆すべきはモロヘイヤに多く含まれる食物繊維。食物繊維には、血糖値の上昇を抑えたり、血液中のコレステロール濃度を下げる働きがあり、糖尿病や脂質異常症などの生活習慣病予防の効果があるとされています。また、腸内環境を整えることで便通が改善し、美容の面でも良い効果が期待できます。モロヘイヤに豊富に含まれるビタミンA、C、Eには、抗酸化作用によって免疫力を高める働きがあるので、風邪やインフルエンザ、アレルギーなど、多くの病気の予防や症状の軽減、アンチエイジング効果にもつながることが期待されます。
モロヘイヤの成分値
(可食部100g当たり、生)
一般的に、これほど栄養価の高い特殊な植物は、独特な匂いや味がして食べにくいことが多いのですが、なんとモロヘイヤは、匂いや味にほとんどクセがなく、ほのかに甘味すら感じられる食べやすい野菜です!
茹でて刻むとオクラに似た粘りがあるため、のどごしが良く、胃に優しく、消化にも良いという、良いこと尽くしの野菜です。すべての意味において「野菜の王様」、「スーパーフード」と言っても過言ではないでしょう。
忙しくストレスの多い現代に生きる私たちの健康を強力にサポートしてくれる救世主的な野菜なのです。
モロヘイヤは、オクラやほうれん草と同様に、茹でて刻むだけで調理ができます。もっと手軽に食卓に取り入れましょう。
葉が濃い緑色で張りがある新鮮なものを選び、出来るだけ新鮮なうちに茹でることが美味しさの秘訣です。
シュウ酸※を含むので軽く茹でて水にさらしてから食べることをお勧めします。茎の部分は固いので葉の部分だけ摘み取るか、一緒に茹でてミキサーにかけるなどペースト状にすれば問題なく食べられます。
茹でた後は、包丁で軽くたたくように刻みます。細かく刻むほど粘りが出るのでお料理や好みに合わせて調整してください。
中東や北アフリカ地域では、刻んでスープにしたり、肉(羊肉、鶏肉、牛肉など)と煮込むことが多いようですが、オクラやほうれん草と同様、お浸しや酢の物、サラダ、和え物、炒め物、揚げ物など、あらゆるお料理に活用できます。ソースやドレッシング、野菜ジュースに加えたり、パン生地やお菓子に練り込んでも良いですね。
すぐに食べない時は冷凍保存がおすすめです。茹でた後、水気を絞り、1食分ずつラップに包んでから保存袋に入れて冷凍室へ。使いたいサイズに刻んで冷凍しておくと、すぐに使えて便利です。
野菜は毎食少しでも!添えることが病気の予防につながります。
モロヘイヤの毒性を心配される方がいますが、毒性があるのは、花が咲いた後にできるサヤとその中にできる種子。これらを大量に摂取すると毒性を引き起こす可能性がありますが、私たちが食用にする市販のモロヘイヤの若葉にはサヤも種子もついていませんので心配ご無用!
厚生労働省の検査でも、人が食用にするモロヘイヤの葉には毒性がないことは確認されています。ただし、ご自身で栽培してサヤや種子を扱う場合は十分に注意してください。
「王様の野菜」、「神の恵み」と呼ばれるモロヘイヤを美味しくいただき、健康長寿を目指しましょう♪
PROFILE
監修:平井美穂(ひらいみほ)
管理栄養士 / 食物栄養学修士 / 調理師 / NPO関西ウエルネス研究所理事
平井外科胃腸科クリニック(神戸市東灘区岡本)、その他透析病院等を含め医療機関にて栄養指導を行う。
百貨店・食品メーカー講師、レシピ提案など、乳幼児から高齢者までを対象に幅広い年齢層に対し、食と健康に関する講演会や料理講習会を行う。