令和のポパイは、モロヘイヤで強くなる!
プロボクサー徳山洋輝は、なぜモロヘイヤを選んだのか?
モロヘイヤ様の栄養素の前にひざまずきなはれ
Twitterを見ていたら、こんなツイートが目に飛び込んできました。
「皆さん、モロヘイヤ様の栄養素の前に跪きなはれ。」
画像には、ノートの写真。野菜の栄養素が手書きでびっしりと書き込まれ、右端のモロヘイヤの部分は赤枠で囲まれています。
皆さん、モロヘイヤ様の栄養素の前に跪きなはれ。 pic.twitter.com/84p3TwKnZz
— 徳山 洋輝 (@toku_box) August 6, 2020
この投稿をした徳山洋輝(ひろき)さんは、千里馬神戸ジム所属のプロボクサー。
2017年西日本バンタム級新人王で元東洋太平洋ランカー。関西のトップボクサーのひとりです。一発でKO勝ちするようなパンチ力はないものの、激しく打ち合い、粘りに粘って接戦を制するような試合が多く、見応えがある、と人気があります。「徳山の試合に外れなし」と言われるほどだそうです。
今回は、この徳山選手にモロヘイヤのお話をうかがいます。
惜敗を喫する!
取材のご承諾をいただいて間もない2020年8月14日、神戸常盤アリーナにて、徳山選手がメインイベントを務める興行が開催されました。徳山選手の対戦相手は、グリーンツダ所属、日本スーパーフライ級10位の那須亮祐選手。前回負けている徳山選手が、復活をかけて日本ランカーに挑戦する試合です。
最後まで食らいついた徳山選手でしたが、序盤で2度のダウンを奪われてしまい、判定で惜敗を喫する結果となりました。
インタビューはその1週間後。かなり激しい試合の後です。体力の回復はどうなのか。メンタルのダメージはいかほどのものか…。
お会いする時は、多少緊張しましたが、奥様と2人で待ち合わせのジムに現れた徳山選手は、思いのほか元気そうでホッとしました。
トレーニング再開は、試合の翌々日!?
まずは、試合後の体の調子について伺ったところ、
「試合後1週間くらい休むこともありますが、今回は、けっこう回復が早かったですね。試合翌日の日曜日だけ休んで、月曜日には練習を再開しました」
とのこと。
もっとも今回は、試合で練習の成果を出せなかったことが悔しく、すぐに次に向けた練習を始めたい気持ちが強かったのだそうです。
コンディション作りは自分で
プロボクシングは、体重による階級別に試合がおこなわれます。そのため厳しいウエイトコントロールがあり、その上で、激しい練習を行って体を鍛え上げ、試合にはベストコンディションで臨む。そういったストイックな生活を要求されるスポーツです。
お聞きして意外だったのは、練習のメニューや、食事制限、試合前の水分補給量の調整など、何でも基本、自分で行うのだそうです。
すべてトレーナーの指導のもとに行うのかと思いきや、インターネットで情報を集めたり、セミナーなどで勉強したり、自らあれこれ試しながら、自分に合うやり方を見つけるということでした。
ボクサーのための食材、モロヘイヤ
そんな徳山選手が、現在、毎食欠かさず食べている野菜がモロヘイヤです。
「毎日」ではなく、「毎食」食べているそうです。
まずは、Twitterに投稿されていた、あのノートを見せていただきました。
左から、ブロッコリー、ほうれん草、ピーマン、にんじん、レッドキャベツ、キャベツ、きゅうり、空芯菜、玉ねぎ、トマト、モロヘイヤ。数値の高いところに黄色いマーカーで印がつけられていて、モロヘイヤの栄養価が圧倒的に高いことが一目瞭然。
「このノートでモロヘイヤの栄養価の高さに度肝を抜かれました」と、徳山選手。
ほとんど、どの栄養素でもモロヘイヤの数値が他を上回っていますが、一つだけ極端に少ない数値があります。
「これはナトリウム、塩分です」と、徳山選手。「減量の最後の一日には塩分カットをするのですが、その時でも、塩分の少ないモロヘイヤは食べられる。まるでボクサーのための食材だと思いました」
奥様の愛子さんは、もともとモロヘイヤが好きでよく食べていたそうです。「実家でも母がよく出してくれました」
徳山選手との結婚後も、愛子さんはモロヘイヤをよく食べていたそうですが、徳山選手の方は「はっきり言って、最初は興味がなかった」とのこと。
愛子さんだけがモロヘイヤを食べている、ということもあったのだとか。
もともと健康や栄養に興味があったという愛子さんが、野菜の栄養価を調べてこのノートを作り、減量の時は食べられるものが限られる徳山選手に勧めたそうです。
このノートを見て、徳山選手のモロヘイヤに対するイメージは一変。
「モロヘイヤなら少ない量でも栄養が摂れる。減量中も罪悪感なく食べられる、いや、食べるべき」と思った徳山選手は、
「これはみんなに知らせなあかん」
と、例のツイートをしたのだそうです。
今では自分が食べるだけでなく、他のボクサーにも勧めるほどモロヘイヤにはまっています。
毎食のモロヘイヤ、その効果は?
この夏、本格的にモロヘイヤを食べたということで、その効果のほどを聞いたところ、「モロヘイヤを食べて全く変わった、ということではないのですが … 」と、ことわった上で
「減量中も体の調子がよく、減量がうまくいきました。いつもは減量後半フラフラになることが多いのですが、今回は最後まで元気でした」とのことです。
「今回、試合後の回復が早かった」というのも、もしかしたらモロヘイヤの抗酸化力が疲労回復に役立ったのかもしれません。
徳山選手が食べるモロヘイヤ料理、どんな食べ方?
プロボクサーでありながらも、平日日中は医療機器メーカーの営業マンとして勤務している徳山選手。お昼ご飯はお弁当だそうです。
愛子さんも、アパレルメーカーのデザイナーとして会社勤めをしている共働き。お弁当は、愛子さんがある程度作り置きしたものを、朝、徳山選手が自分で詰めて持っていくスタイル。モロヘイヤ料理は、必ず用意してあるそうです。
今回「いつも食べているモロヘイヤ料理を持ってきてください」とお願いして、持ってきていただいたのがモロヘイヤのおひたし。
モロヘイヤに、オクラ、ミョウガ、しらすを入れ、鰹節と醤油、白出汁で味付けしたもの。「梅干しが入ったり、その時々で、いろいろ混ぜます」と、愛子さん。
「プロボクサー徳山洋輝ブログ〜蝶のように舞いたい蜂のように刺したい〜」には、こんな料理も紹介されていました。
モロヘイヤとオクラとミョウガの和え物に、納豆、キムチ、アボカド、豚しゃぶをプラス。さらにゆで卵や蒸し鶏をのせたりして食べているとのこと。
さすがボクサーの食事、栄養価が高そうです。
しかも腸内環境にも良さそう!
「モロヘイヤ粉末、さっそく朝食でオートミールにかけていただきました😋
これはいろいろアレンジできそうでレシピ考えるのが楽しみです」
徳山家のモロヘイヤ・アイデアレシピは、まだまだ広がりそうです。
ボクシングはチームスポーツ
徳山選手は、高校まではサッカーに打ち込んでいました。
中学では副主将として全国大会に進出し、高校では部員160人というサッカーの強豪校でサッカー部に所属。
「自分にはたいした実力がない」「大会も、みんなに連れていってもらっていた」と感じていた徳山選手。サッカーをやめたあとは「何か自分ひとりの力で勝負できることをやってみたい」と思い、ボクシングの世界に飛び込みました。
しかし、やればやるほど「ボクシングはチームスポーツだ」と感じたそうです。
「ボクシングは自分一人では絶対に強くなれない。ジムの仲間と切磋琢磨し、トレーナーに指導してもらい、マネージャーが自分より少しだけ強い相手と組んでくれる。だから成長できる。みんなで戦っているチームスポーツなのです」
試合の時に、リングの外から声援を送ってくれるジムのOBやファンの方たちも「チーム」なのだと言います。「応援してくれる声は聞こえています。あの声がなかったら、たぶん立ってられない」
ロゴの「TEAM HIROKI」には、そんな意味が込められています。
母子家庭で育った徳山選手は、小学5年から一般財団法人「あしなが育英会」とつながりがあり、学生時代は自分と同じ、親を亡くした子供たちの心をケアするボランティア活動に打ち込みました。
そのようなことから、24歳、遅咲きのデビューとなった徳山選手ですが、「遅咲きでよかった」と言います。
ボランティア活動を通して学んだ「人とのつながりの大切さ」は、かけがえのないもの。遅咲きだからこそ、きちんと学ぼうという姿勢でいられる。
どんなボクサーを目指してるか、と聞いたところ、「見てる人が、おもしろいと思ってもらえる試合がしたい」。
徳山選手のそんなところが魅力なのだと、ファンの人たちの気持ちがわかったような気がしました。
そしてもちろん、私たちもファンになりました。
徳山選手、体に気をつけて、これからも頑張ってください!